2012年5月4日金曜日

食糧不足が引き起こす学校の問題|日本ユニセフ協会|アフリカ干ばつ緊急募金


アフリカ干ばつ緊急募金 第41報
食糧不足が引き起こす学校の問題

【2012年2月6日 ニジェール・ニアメー発】

ニジェールで現在起きている食糧不足が、この国の何千もの子どもたちに栄養面での危機をもたらすことは今やもう明らかになっています。充分な量と質の食糧がなければ、子どもたち――特に5歳未満児の子どもたち――は命にも関わる栄養不良にかかり、それに関連した健康障害をも引き起こす可能性があります。一方、ここまで明白とは言えない、あるいは、注目されていない事柄に、子どもの教育の問題があります。食糧不足と栄養不足がどれほど大きな影響を子どもたちの教育に与えるか、ということです。食べ物が充分にない状況では、教育はどうしても後回しになってしまうのです。


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ザラさん(14歳)とウームーさん(16歳)は、ニジェールのティラベリ県のベゴルー・トンドゥ村に住む従姉妹同士です。この地域は、今期、干ばつと収穫不足で特にひどい影響を受けています。ザラさんとウームーさん、そしてその家族は、1日1食ありつけられればいいほう。食糧を手に入れるのがそれほど大変なのです。肉とミルクは今や手に入れることができない贅沢品。家畜の羊も、牛も何カ月も前に死に果てました。どうしようもなくなり、父親たちは昨年末からガーナに出稼ぎに出ました。それぞれの父親からの音信はそれ以降ありません。それでも、ふたりはどうにかこうにか学校に通っています。少なくとも今はまだ・・・。

ウームーさんは、現在の状況をこう語ります。「これほど食糧に困ったことはありません。学校はもちろん続けたいけれど、お腹が空きすぎて・・・ときどき黒板の字さえ霞んで見えないんです」と。ザラさんも同じです。状況がこのまま改善されなければ、学校に通うのを諦めざるを得ないと話します。同級生の中には、すでに学校を辞めた子も。2010年10月以来、学校(女子校)に通っている学生数は、180人から100人未満にまで減りました。ティラベリ県のテラ地区の教育担当者は、10月下旬に作物の収穫が終了してから、学校に来なくなった生徒の数は16,000人にものぼっているといいます。


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学校をやめた理由は、「学校に通う元気が残っていないから」という子どもたちもいますが、食糧と仕事を求めて、家族ごと村を離れてしまった人たちもいます。コミュニティ・レベルで栄養不良防止のための活動を行っている国際NGOのHELPによると、ティラベリ県では、通常、6ヵ月はもつはずの10月期の収穫が(収穫不足のために)すでに底をつき、村全体で先祖伝来の土地を離れてしまったところも多いといいます。村を離れた家族の中には、国境を越えて、ブルキナファソに移った人たちもいれば、ニジェールの首都ニアメーのような都市部に流入する農村部の人たちも。いずれの場合も、教育へのアクセスは極めて難しいと言わざるを得ません。

12歳になるセマナさんとその家族は、食糧不足のために、村を捨て、故郷から60キロ離れたニアメー郊外に移住してきました。この地に移住して以来、セマナさんは学校に行っていません。また、近々、学校に戻れる見込みもありません。父親のウマルーさんを手伝い、ロバが引く荷車を使って、街中でいろいろな物品を運ぶ仕事をしているのです。1日の稼ぎは2ユーロ相当。それでも、食べ物だけは買えます。学校に行かないのか、と聞くと、セマナさんはこう答えました。「食べ物を手に入れるために父親を手伝って働く。今の僕にはこの選択肢しかないんだ。学校には行けないさ」


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食糧不足は、家族をもばらばらに引き離しています。学校に行けば、子どもたちは少なくとも1回の食事にありつくことができます。親たちは、それをあてにして、子どもたちを村に残し、仕事と食糧を求めて、ニアメーやブルキナファソへと移り住んでいます。スレイェさんも、村に残された子どものひとりです。彼の面倒をみるのは祖母。ベゴルー・トンドゥ村の学校に通えば、少なくとも1日2回は食事ができます。そんなことから両親は、スレイェさんを残し、昨年末に村を離れました。今年の10月の収穫期まで、村には戻らないそうです。「去年はまだ大丈夫だったけれど、今年に入ってからは良くないんだ」とスレイェさん。「昼間、確かに学校で食事することはできるんだけれど、量が少なすぎるんだ。空腹のあまり、夜は胃が� �くなってうまく寝ることができないよ」

スレイェさん、そしてそのほかの生徒たちにとっても、状況はさらに悪くなりそうです。食事を作っている調理室が閉鎖されれば、多くの生徒たちが学校に来なくなります。そうなれば、教育への影響はさらに大きくなるはずです。「あと1週間はどうにかもつと思う」と語るのはイブル・サリフ校長先生です。調理室を閉鎖すれば、子どもを持つ家族が村を出て行ってしまいます。そうしたら、学校自体を閉鎖せざるを得なくなる」と話します。


現在、ニジェールで見られるように、学校への通学がままならない状況が長く続くと、子どもたちの学習能力や発達全体が阻害され、貧困の悪循環を断つのに大切な、将来的な雇用にさえも影響が出ることになります。ニジェールのように人口の60%近くが貧困ライン以下の生活をし、教育面での様々な指数が世界と比べて低い国では、子どもを学校に「通わせ続ける」意義は過大評価しすぎることはありません。今期の危機が始まる前でさえも、ニジェールの子どもたちの半数以上が、学校に就学しても中途退学していました。

ユニセフはニジェール政府や人道支援活動のパートナーであるWFP(国連世界食糧計画)と共に、教育面でのニーズの増加に対処するため、学校での緊急食糧の提供、避難民の子どもたちのための臨時教室の設置、避難民を受け入れているコミュニティにある既存の学校の拡張などの支援活動を緊急に始めています。しかし、より多くの支援が必要です。ユニセフは、栄養不良の危機にさらされているニジェールの子どもたちのニーズに応え続けるために、2570万米ドルの支援を必要としています。ユニセフとパートナー機関は、何十万もの子どもたちの命を脅かしているこの危機的な事態に対処するために、国際社会が、よりいっそうの努力をし、必要なあらゆる手段をとるよう、求めています。まだ手遅れにはなっていません。しかし、今 、まさに行動を起こす必要があるのです。



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