1.福島県立医大調査:精神科入院の24%に被ばく恐怖影響
2.特定機能病院 患者紹介率や先進医療実施数で格差
3.情報技術を活用した最先端の医療とは
4.泌尿器科受診に「抵抗感」8割 対象臓器の誤解多く、東大調査
5.バイオ医薬を汎用製法で 阪大・大塚化学・東京理科大が技術
6.関節リウマチの原因遺伝子、新たに9つ 理研・東大など発見
7.ストレスで生活習慣病 名大グループ、仕組み解明
8.パーキンソン病の早期診断技術 産総研や同志社大など
9.鬱病と類似する双極性障害 「躁状態」見逃さないで
10.狭心症、更年期女性の1割が発症 胸の痛み長く続く
11.腕の血圧、左右差が高血圧患者の未来を予測―英研究
12.増える高齢者のてんかん 脳梗塞の後遺症や認知症で発症
13.英国の大酒飲みに黄信号、肝疾患死亡率10年で25%増
14.イブプロフェンで高山病緩和、米臨床実験
15.がん化原因の染色体異常防止=制御たんぱく質を発見-新薬期待
16.医師は患者を拒めない?応召義務
17.「忘却が一番怖い」「年単位で医師派遣を」◆Vol.6
18.政府の初動の遅れが"人災"を生む-
19.「特集 震災医療 成果と反省」転載 Vol.11医療も町の復興も手助けしたい
20.とっても専門医 Vol.1初期研修後、専門医プログラムに再びマッチング?
21.尊厳死について初の法案を超党派議連が公表
22.白米の摂取量が多いと2型糖尿病リスクが上昇
23.術後にオピオイドを使用した人は1年後も使用率が高い
24.静脈血栓塞栓症の予防で内科入院患者の30日死亡率は低下するか?
25.術後の赤血球輸血:多いほど良いとは限らない
26.静脈血栓塞栓症予防を全ての患者に実施することを支持するエビデンスはない
27.心房細動患者の脳卒中と死亡リスク:新規心筋バイオマーカーの予測能
28.房室結節アブレーション:心房細動を伴う心不全患者に有効か?
29.Edwards, Medtronic Heart Valves Found Safe in Sweeping Studies
30.Merck Blood Thinner Stops Heart Attacks With Risk of Bleeding
31.Monthly shots of Amgen drug slash cholesterol up to 66 percent
32.Scientists find gene that can make flu a killer
33.Extra smoking counselling 'doesn't help quitters'
34.Stem-Cell Trial Failed to Treat Heart Failure
35.Showing Patients Images of Their Clogged Arteries a Powerful Wake-Up Call
36.Low-Dose Daily Aspirin Enough to Help Heart Attack Patients: Study
37.Study Might Explain Brain Overgrowth Seen in Autism
38.Hormonal Changes May Trigger Migraines in Some Women
39.Treating Gum Disease May Help Diabetics Avoid Complications
40.Other Topics
1) 1千万光年離れたクモの巣のような銀河 NASAが画像公開
2) 房総沖に大活断層、M9の地震起こす可能性
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1.福島県立医大調査:精神科入院の24%に被ばく恐怖影響
毎日新聞社2012年3月26日
新入院患者と放射線被ばくへの恐れの関連
東京電力福島第1原発の事故後に福島県内の精神科に入院・再入院した患者のうち、放射線被ばくの恐怖が関連した可能性のある人は24.4%と全体の4分の1に達したことが福島県立医大の調査で分かった。外来も事故関連とみられる新患は3割を占めた。原発事故が精神疾患へ及ぼす影響を示す事故直後のデータは世界的にもなく、同大は大規模原発事故や長期の避難生活などが心にどんな負担となっているのか患者の追跡調査をしていく。
入院調査は同大神経精神医学講座の和田明助教らが、30病院に3月12日からの2カ月間のアンケートをし、27病院から回答を得た。
事故による転院などを除いた入院・再入院患者610人(男49%、女51%)のうち、被ばくへの恐れが関連あると診断されたのは12.1%の74人、関連があるかもしれないとされた人は12.3%の75人だった。関連がある患者の割合は原発に近い相双・いわき地域が23~27%と高かった。
関連があるとされた74人中震災前に精神科の受診歴がない人は9人いた。74人は事故後1カ月以内の入院・再入院が大半。年齢別では40~50代がほぼ半数を占めた。自宅の被災や、避難所生活をしていた割合が全体傾向より高く、大勢が集まる避難所のストレスに被ばくの不安が重なったケースなどもみられた。
一方、外来調査は三浦至助教らが77病院・クリニックに3月12日からの3カ月間(各週1日を抽出)を聞き、57施設が回答した。
うつ病や不安障害などの新患410人を調べたところ、事故関連と診断されたのは19%の78人、関連があるかもしれないと診断されたのは13.4%の55人だった。計133人のうち、うつ病が最多で47人、急性ストレス障害・PTSD、適応障害がそれぞれ38人だった。半数近くが避難生活のストレスを抱え、4割が放射線の自分への影響、3割が子供など家族への影響の恐怖を訴えた。
チェルノブイリ原発事故でも放射線が住民の精神面に与える影響が報告されているが、10年程度たってからの調査だった。同大神経精神医学講座の丹羽真一教授は「(入院・再入院への)原発事故の影響は大きいという印象だ。例えば除染も他人より自分でしたほうが安心できる面がある。住民参加で放射線被ばくの不安を軽減する取り組みをすることも(精神的負担を減らすために)重要だ」と話している。
◇未知への不安でストレスが発生-前田正治日本トラウマティック・ストレス学会会長(久留米大医学部准教授)の話
もともと精神疾患がある人に放射線被ばくへの不安の影響がまず表れているが、目に見えない放射線への不安はみなが持っている。数値からは安全だと理解できても未知への不安がストレスにつながっている。被災者は住宅や仕事、教育など他にも不安があるが、放射線の不安に集約されている部分があり、冷静に考えることがその軽減にもつながると思う。
2.特定機能病院 患者紹介率や先進医療実施数で格差
読売新聞社2012年3月26日
高度医療を担う大学病院などの「特定機能病院」84か所の診療実績に格差があることが厚生労働省の調べでわかった。紹介状を持つ患者の割合(紹介率)が90%以上の施設から40~50%の施設まであり、国指定の最先端の医療(先進医療)を実施できる数は、施設によって1~15種類とばらついた。どの病院も指定要件は満たしているが、同省はレベルを底上げするため、要件を厳しくする方向で見直す。
3月15日の特定機能病院などの指定要件を見直す同省検討会の初会合で示された。
特定機能病院は原則、紹介状を持つ患者が受診するものとされるが、指定要件では紹介率が30%以上あればよいとされている。ただ、紹介率が低いと、軽症患者が増え、高度医療がおろそかになるとの指摘がある。 そこで、紹介率の低い病院が紹介患者を増やす努力をするよう、指定要件の紹介率の引き上げを検討する。
先進医療は、指定要件では1種類以上行えばよい。だが、実施状況に大きな開きがあることから、現在の指定要件が適切かどうか議論、必要に応じて見直す。
【特定機能病院】 医療機関の役割分担を進める一環として1992年の医療法改正で設けられた。指定要件は▽ベッドが400床以上▽医師の配置が一般病院の最低基準の2倍以上▽診療科目が10以上▽先進医療を1種類以上行う―など多数ある。84か所中80か所が大学病院だ。
3.情報技術を活用した最先端の医療とは
毎日新聞社2012年3月25日
◇遠隔地で診断、カルテ保管
離れた場所で病気を診断したり、病気の治療や処方薬の記録を災害に備えて保管したり……。情報技術の進歩は、医療の向上につながり、患者にもメリットがある。情報技術の医療への応用の先端事例を紹介する。
◇専門医と症例検討
がんの診断に欠かせないのが、コンピューター断層撮影(CT)画像の読み取り(読影)だ。以前は一枚一枚画像を見て異常を確認していたが、ここ10年ほどで、がんの疑われる部位を中心に何百枚もの画像を連続して表示し、アニメーションのように動画的に読影するのが主流になった。「肺のこのあたりが、1年前の画像と比べて少し白くなっているでしょう。こうした変化も分かりやすいんです」と千葉県がんセンターの高野英行画像診断部長は説明する。症状の見落としも少なくなった。
その一方で課題も生まれた。動画的な読影は、高野部長のような放射線科医が担当するが、技量のある医師がどの病院にもいるわけではない。千葉県では、東京のベッドタウンの県北西部に同センターや千葉大病院など高度な医療機関が集まり、それ以外の地域の病院には少ない。こうした地域の病院にはおおむね週に1回、読影のできる医師が派遣されるが、診察時間が限られるため、診断の確定や治療までの時間もかかる。放射線科は内科や外科と比べて地味で、日本では医師の成り手が少ない背景もある。
そこでセンターでは昨年、がんの画像診断の病院間ネットワークシステムを導入した。センターには毎日、県内の病院から40人分ほどのCT画像が送られてくる。テレビ会議システムも併設され、送信側の病院の医師とセンターの医師が同じ画像を見て、疑わしい部分をカーソル(矢印)で指しながら、所見を話し合える。高野部長は「特に顔や骨などのがんは症例が少なく、診断のできる人が少ない。また小さい病院だと、所見を他の医師に相談しようと思っても相手がいないか限られる。こうしたシステムで情報をやり取りするメリットがある」と話す。
画像などの情報を大量に送るには、高性能の通信網が必要だ。情報技術が高度化して送受信する画像が高精細化すれば、ますます重要性が高まる。その点で注目を集めているのが、慶応大理工学部の小池康博教授が開発した世界最高速のプラスチック光ファイバー。光ファイバーはガラス製が一般的で、プラスチックは通過時に光が減衰してしまうため向かないと考えられていた。だが小池教授は、プラスチックを加工して屈折率を調整し、直進する光と屈折した光が同時に伝わる高分子(ポリマー)を開発。この素材で光ファイバーを作った。
ガラスより曲げに強く、切断しにくい特長もある。心臓病治療で知られる榊原記念病院(東京都府中市)や、山形大病院などの病院内ネットワークで既に実用化されている。山形大病院の細矢貴亮教授は利点について「従来の光ファイバーと違い、普通の電気回路と同じように建物内を配線でき、手術の動画なども瞬時に送れる」と話す。大型ディスプレー同士をこの光ファイバーでつなげば、離れた相手とも目の前で話すようにやり取りでき、「将来は遠隔医療などに活用したい」(小池教授)という。小池教授は、政府が09年度に定めた30研究課題にそれぞれ20億~50億円を提供する「最先端研究開発支援プログラム」の助成を受ける。同じく支援を受けるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の開発者の山中伸弥京都大教授� �と並び注目される。
◇災害時に備える
昨年3月の東日本大震災後、被災地の病院で問題となったのが、津波でカルテを流されたり、コンピューターが水につかったりして、既往歴や処方薬が分からなくなったことだ。患者が別の病院に行っても、どのような治療を受けていたかが分からず、継続した治療が難しかった。
そこで厚生労働省は来年度から、地域の複数の医療機関のデータを、患者の同意を得て中核的な病院など別の安全な場所に蓄積する「医療情報連携・保全基盤推進事業」を始める。事業費は約9億5000万円で、人口で約7万~10万人に相当する病院5施設、30の診療所を1単位の地域の目安としてデータを蓄積し、10地域で病院に補助(半額)する。医師でもある同省の福原康之医療技術情報推進室長は「災害時だけでなく、日常的にも投薬や治療の情報を共有でき、薬の重複処方を防ぐなど医療連携が可能になる」と話している。
4.泌尿器科受診に「抵抗感」8割 対象臓器の誤解多く、東大調査
日本経済新聞社2012年3月26日
泌尿器科の診療は抵抗感があったり分かりにくいと感じたりする人が8割に上ることが24日、日本泌尿器科学会理事長を務める本間之夫・東京大教授のグループの調査で分かった。9割の人が泌尿器科を高齢化社会で重要な診療と考えているのに、臓器を誤解している人も多いことが判明。同学会は4月に全国一斉の市民講座を開き、理解を深めてもらう考えだ。
調査は昨年7~8月、全国4151人を対象にインターネットでアンケートを実施。10~90代の男女計3164人から回答を得た。回答者の平均年齢は47.9歳。
泌尿器科について「高齢化社会では特に重要な診療科と思うか」との質問では90.4%が肯定する意見を答えたほか、「排尿のトラブルを扱うので重要な診療科」と考える人も96.1%で、泌尿器の健康に対する関心の高さをうかがわせた。
その一方で、81.1%の人が「受診するのに抵抗を感じる」と回答。「どんな診療をしているのか分かりにくい」と思っている人も80.6%に上り、市民が診療に悪い印象を抱いている実態が浮き彫りになった。
泌尿器科で扱う臓器を尋ねた質問では、膀胱(ぼうこう)や尿道、前立腺は9割を超える人が知っていたが、腎臓は45.2%と5割に満たなかった。逆に肛門は4割近くが泌尿器科の対象と誤解していた。
調査結果を受け、日本泌尿器科学会は4月8日に東京、大阪、名古屋、福岡など全国29都市で一斉に開く市民講座で、泌尿器科の病気や診療について詳しく説明することを決めた。東大で開かれる講座には評論家の立花隆さんと女優の檀ふみさんを招き、対談形式で分かりにくい点などを質問してもらう予定だ。
本間教授は「泌尿器科の実態がよく知られていないことが、診療に対する抵抗やイメージ悪化につながっている可能性がある」と指摘。「正しく理解してもらうことが病気の早期発見や早期治療にもつながる」と話している。全国の市民講座の問い合わせは運営事務局((電)03・3263・5394)まで。
5.バイオ医薬を汎用製法で 阪大・大塚化学・東京理科大が技術
日本経済新聞社2012年3月26日
大阪大学の梶原康宏教授らは、新薬の主役として市場が拡大するバイオ医薬品を、汎用的な薬の製法である化学合成で作る技術を開発した。薬効のカギとなる糖鎖を自在に結合させる独自技術を利用した。がんや多発性硬化症の治療に使うバイオ医薬品のインターフェロンβを作製、マウスの実験で既存薬と同じ働きをすることを確かめた。新技術が実用化すればバイオ医薬品の製造コストを大幅に下げられ、患者の費用負担軽減や医療費抑制につながる。
大塚化学、東京理科大学との共同成果。
インターフェロンβは166個のアミノ酸からなるたんぱく質製剤。世界で数千億円規模の市場がある。遺伝子を組み込んだ動物細胞などを使って生産するが、量産の培養が難しく、未知のウイルスや動物由来のたんぱく質が混じらないように品質管理のノウハウもいる。製造コストが高くつき、多発性硬化症向け治療だと薬価ベースで薬代は年間約200万円にもなる。
研究チームは鶏卵から取り出したさまざまな糖鎖をアミノ酸と自在に結合させる独自技術を利用した。まず、糖鎖と数十のアミノ酸をくっつけた3つの「部品」を作製。溶液中で混ぜるだけで化学合成でき、刺激を与えると従来法と同じ構造のインターフェロンβができた。
これをがんを移植したマウスに投与し、既存のインターフェロンβと同じレベルのがんの縮小効果を確認した。
現在、アミノ酸が結合したペプチド製剤の世界大手、バッケム(スイス)の技術評価を受けており、順調にいけば臨床試験への足がかりになる。
1~2年以内に数グラム規模の量を作製できるようにし、量産への技術的課題を探る。年間100グラムの生産能力があれば実用化できるとみている。
新技術を使って分子量の大きな抗体医薬を作るのは難しいが、インターロイキン2やインターフェロンγといった多様なバイオ医薬品に応用が可能とみている。
6.関節リウマチの原因遺伝子、新たに9つ 理研・東大など発見
日本経済新聞社2012年3月26日
理化学研究所や東京大学などは、関節リウマチの発症に関係する遺伝子を新たに9つ発見した。遺伝子の働き具合の違いで発症リスクが1~2割高まる。日本人と欧米人との間には、関節リウマチの原因遺伝子に違いがあることも突き止めた。日本人に適した新しい治療薬の開発などに役立つとみている。成果は26日の米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」(電子版)に掲載される。
発見したのはリンパ球の活動に作用する「B3GNT2」など9種類の遺伝子。関節リウマチ患者9351人と患者でない3万8575人の遺伝子を分析した。それぞれの遺伝子で、発症しやすい遺伝子タイプをもつ人は病気になる割合が1.1~1.2倍だった。
今回の9遺伝子を含め、日本人の関節リウマチ発症に関係する遺伝子は23種類わかっている。うち8遺伝子は、欧米人の関節リウマチ発症とは関連性が認められなかったといい、人種差があるかもしれないと研究チームはみている。
関節リウマチは過剰な免疫反応が体内で起こる自己免疫疾患で、厚生労働省によると現在国内には約50万人の患者がいる。
7.ストレスで生活習慣病 名大グループ、仕組み解明
日本経済新聞社2012年3月24日
ストレスが内臓脂肪の炎症を引き起こし、高血糖や高脂血症などの生活習慣病につながる仕組みを、名古屋大の研究グループが24日までに、マウスを使った実験で明らかにした。腹回りの内臓脂肪が炎症を起こし、生活習慣病を引き起こすメタボリック症候群と同様の仕組みという。
ストレスと生活習慣病は関連が深いとされていたが、詳しいメカニズムは分かっていなかった。同大医学系研究科の竹下享典講師(循環器内科学)は「ストレスが引き起こす炎症を抑える治療法の開発が期待される」と話している。
グループは、マウスを1日2時間、直径3センチの狭い筒に入れて2週間飼育し、ストレスを与えると、副腎皮質などから分泌されるホルモンによって内臓脂肪の組織が分解、萎縮し、炎症を引き起こす「MCP―1」というタンパク質が細胞内や血液中で増加。正常なマウスと比べ2割程度、インスリンの働きが鈍くなって血中の糖を細胞に取り込みにくくなったり、血が固まって血栓ができやすくなったりした。
一方で、MCP―1の働きを抑える脂肪幹細胞を注入して治療をすると、脂肪の炎症やインスリンの働きが改善されることも確認した。
研究成果は、米科学誌「ダイアビーティーズ」電子版に発表された。
8.パーキンソン病の早期診断技術 産総研や同志社大など
日本経済新聞社2012年3月26日
産業技術総合研究所と同志社大学、東京大学の研究チームは、パーキンソン病の早期診断に役立つ技術を開発した。患者の血液中に多い特定のたんぱく質の量を調べる。病気が早期に分かれば進行を遅らせることもできる。今後、製薬会社などと実用化を目指す。
パーキンソン病は脳で神経伝達物質のドーパミンが作れなくなり発症する。
研究グループはたんぱく質「DJ―1」が酸化した物質が、患者の脳に多いのに着目。血液中でもこの酸化物が増えることを突き止めた。酸化物と結合する物質を作り血中濃度を測定すると、患者では健常者より濃度が最大8倍だった。
9.鬱病と類似する双極性障害 「躁状態」見逃さないで
産経新聞社2012年3月26日
内閣府と警察庁によると、平成23年の自殺者は3万651人で、14年連続で3万人を超えた。自殺につながる可能性がある健康問題は、鬱病以外に「双極性障害」がある。躁鬱病の一つで、躁状態と鬱状態を繰り返す脳の病気だ。鬱病と間違われやすいが、遺伝的要因が大きく、治療法も異なる。躁状態を見逃さないことが適切な診断と治療を受ける鍵となる。
双極性障害の「鬱」の症状は、気分の落ち込みなど鬱病の症状とほぼ同じ。
一方、「躁」の症状は壮快感や誇大妄想などで、気分が著しく高揚し、自分が偉くなったように感じたり、「自分が正しい」と思い込んだりする。具体的な言動の例としては、非常に活動的で落ち着きがない▽口数が増え、早口でしゃべり続ける▽アイデアが次々と浮かぶ▽仕事や勉強をバリバリこなせる▽徹夜しても平気▽気が散りやすい▽怒りっぽい▽お金の使い方が荒くなる-などだ。
こうした言動は人間関係・社会生活・経済活動に深刻な悪影響を及ぼし、離別や自己破産などにもつながりかねない。また、鬱に転じたときや、躁と鬱の症状が同時に現れたとき、自責の念や焦燥感から自殺に走る危険性が高まるとの指摘もある。
本人は「絶好調」と…
重症の「双極I型障害」は躁と鬱のギャップが大きく、躁状態にあると借金をしてでも買い物をし続けるなど、家族らが目を離せなくなるような行動をする。そのため、発見が早く、鬱病との判別もしやすい。
I型より軽症の「双極II型障害」や、II型より躁と鬱の振れが穏やかな「気分循環性障害」は、鬱には気付いても躁には気付きにくい。特に程度の軽い「軽躁」は、本人は「絶好調」と感じ、周囲は「やけに元気だな」などと多少圧倒される程度で見過ごしがちだ。
精神医学博士で帝京大学溝口病院(川崎市高津区)の張賢徳(よしのり)教授は「鬱病患者の中から双極性障害の人が見つかることがしばしばある。精神科医らはより気付かれにくいII型の発見をしていくべきだと感じている」と話す。
ただ、双極性障害と診断するには躁の波を確認する必要があり、初診から診断までに長い年月がかかることも珍しくないという。
鬱状態の方が長く続き、鬱でも躁でもない状態のときもあることが適切な診断をより困難にしている。
遺伝的要因が8割
双極性障害は鬱病と同じく薬物治療が中心だが、治療方針は異なる。誤って鬱病の治療をすると、症状が悪化する可能性がある。
鬱病は主に抗鬱薬で鬱状態を取り除き、気分を高揚させる。良くなれば服用をやめることもできる。これに対し、双極性障害の治療では主に気分安定薬や抗精神病薬を処方し、躁状態と鬱状態の波を小さくすることを目指す。服用を中止すると再発しやすく、薬を飲み続ける必要がある。
張教授は「よく『鬱病の原因は遺伝3割、環境7割』といわれるが、双極性障害は7~8割が遺伝的要因。極めて生物学的な脳の病気であり、現時点では根治できない」と解説する。患者が適切な治療を受けるためには「偏見を持たず、鬱病との違いを正しく理解することが重要」と強調している。
【用語解説】双極性障害
躁鬱病は重症なものから順に、「双極I型障害」「双極II型障害」「気分循環性障害」などに分類される。いずれも躁状態と鬱状態を繰り返す脳の病気。抗精神病薬などで躁と鬱の波を小さくし、再発を防ぐことが治療の基本となる。
10.狭心症、更年期女性の1割が発症 胸の痛み長く続く
日本経済新聞社2012年3月23日
心臓の血管が狭くなって胸の痛みが生じる狭心症や心筋梗塞は男性に多い病気とされてきた。ところが、更年期の女性の約1割がかかる狭心症があることは意外に知られていない。胸などの痛みが長時間続くのが特徴で、治療法も通常とは異なる。命に直接関わらないが、生活の質の低下を招く原因になる。何かおかしいと思ったら早めに病院の循環器科や女性外来などを受診してほしい。
微小血管狭心症の患者にニトログリセリンを投与して造影検査すると、冠動脈は太く映るが非常に細い血管は映らない=日大提供
千葉県佐倉市に住むA子さん(62)が胸の痛みを感じたのは4年前。「朝方に長くて細い感じの痛みが起きた。短い時は30分程度、長いと1日痛んだ」。そこで、近所の病院の循環器科を受診し、心電図のほか、カテーテルと呼ばれる細い管を使って心臓に血液を送る太い冠動脈の状態を調べる検査もしたが、異常は見つからなかった。
診断は難しく
胸の痛みが取れないため、血管を広げる作用のあるニトログリセリンを処方されたが効かなかった。「痛みがひどくて眠れず、耳鳴りや頭痛にも悩んだ」。A子さんの訴えに、医師は精神科を一度受診するよう勧めた。
結局、「微小血管狭心症」と診断がついたのが2年後。心臓の筋肉にある細い血管が収縮しやすくなり、胸やあご、背中の痛みなどを引き起こす病気にかかっていた。A子さんは適切な治療で痛みもほとんどなくなった。
一般の狭心症は男性に多く、冠動脈が硬化して狭くなったり、けいれんしたりして血流が悪くなり胸に痛みが出る。これに対し、微小血管狭心症は女性の中でも特に更年期に多い。「血管を広げる女性ホルモンであるエストロゲンの量が閉経で減り、心臓の細い血管が収縮しやすくなるのが原因と考えられている」と、静風荘病院(埼玉県新座市)の天野恵子医師は説明する。
購入する場所PMS脱出
この病気が米国で報告されてから20年以上たつが「循環器専門の医師でも詳しい人は多くない」(天野医師)。A子さんのように診断がつかずに、複数の医療機関を渡り歩く人が後を絶たないという。
その理由の一つが診断の難しさ。カテーテルを使った血管造影検査では細い血管は映りにくい。心電図に異常が出るケースも少ない。
ただ、これまでの研究で病気の特徴は分かっている。就寝中など安静時に起こりやすいことと、痛みが長引くことだ。日本大学付属練馬光が丘病院の福島聖二ICU・CCU室長は「10分から場合によっては数時間、ひどいケースでは一日中痛む」と指摘する。また胸の痛みを感じても、逆流性食道炎だったり、更年期障害だったりするケースも少なくない。そこで、福島室長らは磁気共鳴画像装置(MRI)などを活用し、血流の変化から病気を確定する検査方法の確立を目指している。
治療も一般の狭心症とは異なる。ニトログリセリンは細い血管を広げる作用が弱いため、カルシウム拮抗薬というタイプを投与する。天野医師によると、約9割で胸痛がなくなるという。うつ病などに用いる漢方薬が効く患者もいる。
微小血管狭心症は予防するのは難しいが、痛みを引き起こしかねないストレスや疲労をなるべくためないなど日常生活に気を配りたい。
閉経後、リスク高く
女性はエストロゲンの作用で血管が守られているが、閉経後に減ってしまうと、男性と同じタイプの狭心症や心筋梗塞になるリスクが急速に高まる。男性より5~10年遅れて発症するといわれており、「女性は70歳前後からリスクが高まり、80歳以上の死因ではむしろ男性を上回っている」と帝京大学の寺本民生教授は話す。
また、閉経前でもたばこを吸っていたり、糖尿病を発症していたりすると動脈硬化が進む危険性もある。
さらに、女性が心筋梗塞を発症すると、重症化しやすく死亡率が高いことが分かってきた。国立循環器病研究センターの横山広行・心臓血管内科部門特任部長らが、全国27の医療機関の協力を得て調べた成果だ。2005~09年に心筋梗塞を起こして24時間以内に入院した男女2714人の中で、亡くなった人の割合は男性が5%だったのに対し、女性は12.4%と2倍以上だった。
女性は発症しても医療機関を受診するまでの時間が男性より1時間遅かったという。「胸の中心を針で刺す痛みという典型的な症状が女性には表れにくく、危険に気づくのが遅れるからだろう」と横山特任部長は推測する。腕がだるい、息が苦しい、喉が締め付けられるといった訴えが多く、命にかかわる病気と思わないケースが少なくないようだ。女性は男性より冠動脈が細くて広がりにくいことも関係している可能性がある。
従来、医療現場では男女同じ病名なら、症状も治療を同じだとする考え方が主流だった。しかし現在では、性差によって病気のなりやすさや治療法が異なる例もあるという考えが広がりつつある。女性外来や男性外来などを設ける医療機関も増えている。天野医師は「こころの問題も含めて、診療に性差の視点を取り入れていくことがますます重要になっている」と訴えている。
11.腕の血圧、左右差が高血圧患者の未来を予測―英研究
Medical Tribune2012年3月23日
英エクセター大学ヘルスサービス研究所のChristopher E. Clark氏らは、両腕の血圧の差が、高血圧患者の10年間の心臓や血管に関する病気や死亡を予測すると、3月20日付の英医学誌「BMJ」(2012; 344: e1327)に発表した。Clark氏らは以前にも、腕の血圧の左右差が末梢(まっしょう)血管疾患、心血管疾患死などと関連していたと報告している(関連記事)。同氏らは、日常診療に両腕の血圧測定を導入すべきではないかとしている。
1ミリメートルHg増ごとにリスク5~6%上昇
Clark氏らは、2002年から英デボン州の一般診療科を受診する高血圧患者230人(平均年齢68.1歳)を登録し、4カ月間(2~12カ月)の診療時に血圧測定を3回行い、中央値で9.8年(0.4~11.4年)追跡。両腕の収縮期(最大)血圧の差と、心血管イベント(心血管疾患の発症や入院、死亡など)および全死亡(すべての原因による死亡)が関連するかを検討した。
両腕の血圧差は平均1.5ミリメートルHgで、10ミリメートルHg以上が55人(24%)、15ミリメートルHg以上が21人(9%)だった。
検討の結果、両腕の血圧差は心血管イベント、心血管疾患による死亡、全死亡などのリスク上昇と関連しており、心血管イベントのリスクは血圧差が10ミリメートルHg以上と15ミリメートルHg以上でともに2.8倍、全死亡についてもそれぞれ3.6倍、3.1倍と上昇した。血圧差が1ミリメートルHg増加するごとのリスク上昇は5~6%だった。
拡張期(最小)血圧の差が10ミリメートルHg以上だったのは14人(6%)と少なかったが、心血管イベントのリスクが3.8倍上昇していた。
なお、 心血管疾患の既往がない183人を対象にした別解析でも、両腕の収縮期血圧に差がある場合に心血管イベント、心血管死、全死亡などのリスク増加が認められた。全死亡は血圧差10ミリメートルHg以上で2.6倍、15ミリメートルHg以上で2.7倍だったという。
The difference in blood pressure readings between arms and survival: primary care cohort study
12.増える高齢者のてんかん 脳梗塞の後遺症や認知症で発症
東京新聞社2012年3月20日
てんかんを発症する高齢者が増えている。脳梗塞の後遺症や認知症などが主な原因とみられ、高齢化で今後も増えると予想される。発作が目立たないため病気に気付かれにくく、事故やけがにつながる恐れもあり、周囲の理解と適切な診療が不可欠だ。 (竹上順子)
愛知県で昨夏、車の玉突き衝突で母子二人が亡くなった事故があった。運転していた七十代後半の男性は、てんかんの発作で意識を失っていたと、事故後に診断された。
男性は、自動車運転過失致死傷容疑で送検されたが、先月、不起訴になった。一貫して「なぜ事故が起きたのか分からない」と話しており、病気の自覚がなく、危険を予見できなかったと判断されたとみられる。
「てんかんに気付いていない高齢者が、交通事故を起こす例は少なくない」と、脳神経疾患専門の広南病院(仙台市)の大沼歩・診療部長(神経内科)は話す。
同病院は、二〇〇〇年以降に、五十歳以上で側頭葉てんかんを発症したと診断された六十人を対象に、調査を実施。車を運転していた三十二人のうち、半数が、運転中に発作を経験していたことが分かった。うち十五人が、てんかんと診断される前だった。
「事故で多いのは、前の車への追突。事故にはならなくても、信号が変わっても発進せず、助手席の家族が異変に気付いたり、意識を失って縁石に乗り上げたりした例もある」と大沼医師は話す。
「てんかんは子どもの病気と思っている人は多いが、高齢になって発症する人は多い」と、国立精神・神経医療研究センター病院の渡辺雅子・精神科医長は指摘する。産業医科大の赤松直樹准教授(神経内科)によると、全体的なてんかんの有病率は約0・8%だが、六十五歳以上では1~2%になると推定されるという。
高齢者のてんかんの主な原因は、脳梗塞など脳血管障害の後遺症や脳腫瘍、脳外傷、認知症などとされる。一方、原因不明も多い。
発作は、激しいけいれんなどは少なく▽意識がもうろうとする▽目は開いているが、話し掛けても答えない▽口をペチャペチャさせるなどの動作を繰り返す▽「はい」「はい」など同じ単語を繰り返し発声する-など、周りには分かりにくいケースが多い。症状には健忘もあるため、認知症外来を受診して、てんかんに気付く例もあるという。
失神など他にも間違われやすい病気もあるが、渡辺医長は「内科のかかりつけ医をはじめ、医師は、高齢者の様子がおかしいと相談を受けた場合、てんかんの可能性を考えてほしい」と話す。赤松准教授は「脳波やMRIの検査もするが、家族が発作の様子を正しく伝えることが、診断に役立つ」と話す。受診の際はなるべく、てんかん専門医を選んでほしいという。
◆8~9割の発作 薬物で抑制可能
治療は薬物療法が中心。一般的な抗てんかん薬で、八~九割の人の発作が抑えられるという。発作が初めてでも、高齢者は再発リスクが高く、転倒でけがをしやすかったり、発作が続く重積状態になりやすかったりするため、早めに治療を始めることが多い。ただ、赤松准教授は「他の疾患がある人が多いため、他の薬との相互作用には気を付けなければ」と指摘する。
「高齢者の中には、てんかんに偏見を持っている人も多いが、脳があれば誰でもなる可能性がある病気」と渡辺医長。
日本てんかん協会の田所裕二・事務局長は「発作はコントロールしやすいので、医師とコミュニケーションをとり、適切な治療を受けてほしい」と話している。
13.英国の大酒飲みに黄信号、肝疾患死亡率10年で25%増
AFPBB News2012年3月24日
英国では過去10年の間に、肝疾患による死亡率が25%上昇した。主な原因はアルコール摂取の増加にあるという。
英国の「全国終末期医療情報ネットワーク(National End of Life Care Intelligence Network)」がまとめた2001年~09年の統計が22日に発表された。これによると、「大酒飲みカルチャー」で悪名高い英国の肝疾患による死の3分の1以上が、アルコールに関連する肝疾患だったという。また肥満、B型肝炎、C型肝炎も肝疾患による死亡率を高める要素となっていた。
もうひとつの傾向として、がんや心疾患といった他の主な死因による死亡率が落ちているのに対し、肝疾患による死亡率は急激に増えていた。
英国の肝臓病患者団体「ブリティッシュ・リバー・トラスト(British Liver Trust)」のアンドリュー・ラングフォード(Andrew Langford)事務総長によると、主な死因で増加傾向にあるのは肝疾患だけ。同氏は「命を救うために」アルコール飲料の値段を上げ、高脂肪食品に課税することを推奨している。
また、肝疾患で死亡した人の約9割が70歳前に亡くなっていること、40代での肝疾患による死が増えていること、肝疾患で亡くなる人の5人に3人は男性であることなどが明らかになった。
さらに貧困地域と裕福な地域を比べた場合、前者のほうがアルコール関連の肝疾患での死亡率が3倍高かった。
欧州連合(EU)加盟27か国を比較した2010年の調査は、英国を欧州における「大量飲酒の首都」と呼んでいる。EUの世論調査ユーロバロメーター(Eurobarometer)によると、英国人は常習飲酒者が最も多い国ではないが、1度に飲む酒量が最も多い。(c)
14.イブプロフェンで高山病緩和、米臨床実験
AFPBB News2012年3月23日
消炎鎮痛剤イブプロフェンで、高山病の急性症状が緩和できるとする米スタンフォード大(Stanford University)の臨床研究が20日、医学誌「Annals of Emergency Medicine(救急医療年報)」オンライン版に発表された。
高山病は頭痛、疲労感、目まい、吐き気、嘔吐や食欲不振などの症状を伴い、ひどい場合には致死率の高い脳水腫を引き起こすこともある。登山やスキーを楽しむ数百万人の米国人のうち4分の1が発症しているとされる。
研究チームは今回、カリフォルニア(California)州ビショップ(Bishop)北西に位置するホワイト山脈(White Mountains)で実験を行った。男性58人と女性28人に、まず高度1250メートル地点で一晩過ごしてもらい、翌朝8時に市販のイブプロフェンまたは偽薬それぞれ600ミリグラムを服用してもらった。被験者らはその後、高度3566メートル地点まで登り、午後2時に同量を服用。そして最後に高度3831メートルまで登って、午前8時に同量の薬を服用してから、一夜を過ごした。
するとイブプロフェンを服用した44人のうち高山病を発症したのは19人だったのに対し、偽薬を服用した42人では29人が発症していた。これは、イブプロフェンによって高山病の発症率が26%抑えられたことになると研究者らは指摘している。また、イブプロフェン服用者では、発症しても症状が比較的軽かったとしている。
高地では低い気圧のため大気中の酸素濃度が薄くなり、呼吸が難しくなる。酸素不足で脳内の液体が膨張することが高山病の原因だともされており、研究チームはイブプロフェンがこの膨張を抑えるのではないかと推測している。(c)AFP
15.がん化原因の染色体異常防止=制御たんぱく質を発見-新薬期待
東京理科大と大阪大
時事通信社2012年3月26日
細胞の染色体の形や本数に異常が生じてがんになるのを防ぐ上で、重要な役割を果たすたんぱく質が見つかった。東京理科大と大阪大の研究チームによる22日までの研究成果で、論文は米科学誌セル・リポーツ電子版に発表される。東京理科大の松永幸大准教授によると、このたんぱく質が働く仕組みを利用して、新たな抗がん剤を開発できる可能性があるという。
ヒトの細胞には1番から22番までの常染色体のほか、女性の場合はXが2本、男性はXとYの性染色体がある。細胞が分裂増殖する際、染色体も1本が2本に複製されて増えるが、「X」字形になってから正しく2本に引き離される必要があり、増えている途中で離れてしまうと形がおかしくなったり、本数が3本以上になったりする。
松永准教授らはヒトの細胞を使った実験で、「RBMX」と呼ばれるたんぱく質が、別のたんぱく質「コヒーシン」をのりとして、増えている途中の染色体を接着することを発見した。RBMXがうまく働かないよう操作すると、コヒーシンが染色体にくっつかず、染色体が異常な形でばらばらになった。染色体の異常は細胞のがん化につながる。
16.医師は患者を拒めない?応召義務
大磯義一郎(加治・木村法律事務所 弁護士、医師)
CareerBrain2012年2月24日/3月23日
(上)- 医療法学塾
目の前の患者を助けなければならない―。医療現場を支えているのは、医師のこうした倫理観です。
とはいえ、目の前の患者の診療を拒んだら、その医師は法律で裁かれてしまうのでしょうか。どんな状況でも患者が現れたら、その診療を第一に考えなければならないとすると、医師の人権はどうなるのでしょうか。
医師法が定める医師の義務について解説する本連載2回目の今回は、医師法19条1項が定める「応召義務」について取り上げます。
■応召義務は直接患者に対する義務ではない
どのような薬は、帯状疱疹の治療に使用されていますか?
上記のように医師法19条1項において、医師の応召義務は定められています。この義務が定められたのは、医師資格が免許制をとっており、医師に対し業務独占(医師法17条)を認めていること、国民の生命身体に関する事項であることからだと、日本では考えられています。
では、この応召義務とはいったい誰の誰に対する義務なのでしょうか。
医師法は、国家と個人の間の関係を規定する「公法」に分類されます。つまり、医師資格を管理・監督する国と、主には「医師資格を有する国民としての医師」との関係を規定する法であるとされています。したがって、応召義務も、目の前の診療を求める患者(私人)に対する義務ではなく、医師資格を管理・監督する国に対する義務なのです=図1=。
■公法上の義務と私法上の義務の関係
例えば、営業許可を得ずに行った荷物の運送は、公法である「貨物自動車運送事業法」違反として刑罰を科されますが、だからといって、国民同士(私人間)の取引きである運送契約が無効にはなりませんので、運賃を返す必要はありません(名古屋高判昭和35年12月26日高裁刑集13巻10号781頁)。
同様に、医師は、応召義務違反によって行政処分を受けることはあり得ますが、患者との間の法律関係において直ちに違法とはいえませんし、患者から医師に対し、「応召義務を定める医師法19条1項に基づき、わたしと診療契約を締結せよ」と迫ることもできません。
■応召義務は訓示規定的
医師法19条1項には、違反に対する刑罰規定がありません。また、厚生省医務局医務課長回答昭和30年8月12日医収第755号によると、「医師が第十九条の義務違反を行った場合には罰則の適用はないが,医師法第七条にいう『医師としての品位を損するような行為のあったとき」にあたるから,義務違反を反覆するが如き場合において同条の規定により医師免許の取消又は停止を命ずる場合もありうる」とされており、繰り返し19条違反があった場合に初めて、「品位を損する行為」という一般事由により行政処分が課されうるということですので、応召義務は訓示規定に類する条文と言えます。
ちなみに、米国では「医師は、患者関係に入るか否かを選択する職業上の特権を有し、それに従って患者に治療を提供する責務を果たし続けなければならない」(米国医師会倫理綱領)とされており、そもそも医師に応召義務を課していません。ドイツでも同様の制度をとっており、国際的には、必ずしも医師であるがゆえに応召義務が課せられて当然ということもありません。
■法的義務と倫理の相違
患者が困っていたら医師が助けるのは職業倫理として当たり前ではないかと思われる方も多いでしょう。その感覚自体は妥当かと考えられますが、だからといって、目の前のすべての患者を助けることを法的義務にすると、大きな問題が生じます。
法とは、「国家権力の強制によってその実効性が保障された社会規範」を指すのであり、ひとたび法律上の義務として強制力を有することとなると、その内容を本人の意思如何にかかわらず、国家権力によって強制させられることから、人権侵害を必然的に含んでしまうという点が倫理との大きな相違点なのです。
したがって、私人に対し法的義務を課すということは、単に倫理的に正しいからという観点だけではなく、必然的に生ずる人権侵害との比較考量をした上で、その是非について判断しなければなりません。
■応召義務の位置付け
長い間、医師法19条1項は、公法上の義務であり、訓示規定的条文であるとされておりましたので、法的強制力という意味では、倫理規範と同程度と考えられてきました。
つまり、患者に対する義務ではなくても、「医師という職業に求められる高い倫理的・社会的責任」の一つとして応召義務があり、「時間外であろうと、専門外であろうと、患者が診療報酬を払ってくれるという保証がなくても、医師である以上、患者の求めがあれば診療に当たるべきである」という考え方がスローガンとしてあり続けてきたのが、医療界の実際のところなのではないでしょうか。
次回は、医師法19条1項に関する判例の流れを解説したいと思います。(下)- 医療法学塾
医師法19条1項に定める応召義務は、医師の国に対する公法上の義務であり、患者との間では直接には適用されないことを前回確認しました。また、応召義務は罰則規定のない訓示規定的条文であるがゆえに、あくまでもスローガンとして高いレベルが求められてきたということも示しました。
ただ最近では、必ずしも応召義務をこのようにとらえていない判例もあります。本稿では、司法による応召義務のとらえ方がどのように変化してきているかをお伝えしたいと思います。
■従来の判例は応召義務違反で民事責任なし
従来の判例は、医師が応召義務に違反をしても、患者に対して損害賠償責任といった民事責任を負わないという、前回お話しした法の趣旨と合致した判断をしています。
常位胎盤早期剥離にて入院中の妊婦のナースコールに対し、助産師の応対のみで医師の診察をしなかったことが応召義務違反であると争った事案では、「そもそも右義務(応召義務)は本来医師の国に対する義務であつて、右条項によつて直接医師が患者に対して右義務を負担するものと解することはできず、…」(東京地判昭和56年10月27日判タ460号142頁)と判示していますし、急性冠症候群疑いの患者が入院先が見つからず死亡した事案において、脳神経外科の当直医が交通外傷の患者診療中を理由に受け入れ不能としたことに対して応召義務違反が争われた判決では、「右規定(応召義務)における医師の義務は公法上の義務と解すべきであり、右義務違反が直ちに民法上の不法行為を構成するものと断ずることには疑問がある」� �名古屋地判昭和58年8月19日判タ519号230頁)と判示してきました。
■判例が変わった契機
ところが、下記の事案において、裁判所は従来とは異なる判断を下しました。
●千葉地判昭和61年7月25日判タ634号196頁=図=
1歳1か月の幼児の母親が、幼児に喘鳴があったため、風邪をひいたかと思い、平日の午前9時に近医(A医院)を受診させたところ、気管支肺炎と診断されました。甲医師は、チアノーゼもあることから、入院加療のため小児科医のいるB病院(公立病院)に転送する必要があると考え、救急車要請の上、B病院に電話しました。ところが、電話対応したB病院の乙看護師が、丙小児科医に転送依頼がある旨伝え、受け入れ可能か確認している間に、A医院に救急車が到着してしまったため、甲医師は、自身の名刺にB病院小児科外来担当医宛の紹介文を書き、幼児の母親に持たせ救急車に乗せてしまいました。
乙看護師は、丙医師よりベッド満床のため受け入れられないとの返事を受け、その旨を伝えようとしたところ、電話が既に切れていました。そのため、乙看護師は丙医師の指示に従い、A医院に電話し、患者を受けられない旨伝えたところ、甲医師から患者はもう既に救急車に乗りB病院に向かって出発していると伝えられました。
また、救急車出発時に、救急隊からB病院に搬送する旨の電話がありましたが、同様にベッド満床のため受け入れられないと断りました。
しかし、A医院を出てから18分後、幼児を乗せた救急車はそのままB病院前に到着しました。救急隊は病院前からB病院に電話し、入院若しくは診察を要請したものの、やはり同様に、ベッド満床のため断られました。
やむを得ず消防署司令室は、管轄内の各病院に電話しましたが、なかなか受け入れ先が見つからず、その間2回、B病院に受け入れ要請したものの同様の理由で断られました。
B病院に救急車が到着してから1時間後、管轄外への患者搬送もやむを得ないと考え、搬送に先立ち、応急の措置及び搬送に耐え得るか診察してほしい旨B病院に依頼したところ、丁医師がそれに応じ、救急車内で診察を行い、喘鳴強く、胸部全体にわたり湿性ラ音を認めるも1-2時間の搬送には耐えられると診断し、点滴等の応急処置は取らずに救急車を送り出しました。
救急車は、B病院を出た後、同病院付近の路上で搬送先が決まるまで待機していたところ、10分後(B病院到着から約1時間15分後)に指令室より、管轄外のC医院が受け入れ可能であるとの連絡を受け、搬送開始。それから約1時間後にC医院に到着(A医院を出てから約2時間30分後、B病院到着から約2時間10分後)、治療をしましたが、幼児の呼吸状態が悪化し、C医院到着後約2時間45分後(A医院を出てから約5時間15分後、B病院到着から約2時間後)に幼児は死亡してしまいました。
本件において、裁判所は「医師法19条1項は、『診療に従事する医師は、診療治療の要求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない』と規定する。この医師の応招義務は、直接には公法上の義務であって、医師が診療を拒否すれば、それがすべて民事上医師の過失になるとは考えられないが、医師法19条1項が患者の保護のために定められた規定であることに鑑み、医師が診療拒否によって患者に損害を与えた場合には、医師に過失があるとの一応の推定がなされ診療拒否に正当事由がある等の反証がないかぎり医師の民事責任が認められると解すべきである」として、結果的には医師法上の応召義務違反を民事上の過失として取り扱うことを判示しました。
■損害は、被害者だけに負担せしめるべきか―「損害の衡平な分担」
民事不法行為法は、「損害の衡平な分担」を理念としています。従って、事案を全体としてとらえ、被害者に生じた損害を被害者だけの負担とせしめるか、それとも被害に関与した者に負担せしめるか。被害に関与した者に負担せしめるとした場合、どの程度の負担割合とするかを「損害の衡平な分担」の見地から検討し、判断することとなります。
本件における幼児の転帰は残念極まりないことですし、救急車内で経過した約2時間半は母親にとって永遠とさえ思えたものと思われます。
受け入れを断るに至った経緯に同情できる点はあるものの、B病院が公的医療機関であることも考慮すると、本件事案を全体として見たときに、生じた損害にB病院が一定の負担をすることは、個別具体的な紛争の解決として一定の妥当性を持つものと思われます。
そして、本件におけるB病院の問題点は、取っ掛かりに不運な点があるものの、患児は平日の午前中に現にB病院前まで来ていたのにもかかわらず、他の転送先が見つからないまま4回診察を要請されているのに、最終的には具体的な処置をせず、救急車を送り出したことにあると言えます(他には、1~2時間の搬送可能との診断に過誤があるかという論点もありますが、本件事案を全体として見たときに、主たる問題点とは言い難いと言えます)。
このような個別具体的な紛争の解決において、損害の衡平な分担を図ろうとした結果、裁判所は、上記判示をしたものと思われます。
■規範は独り歩きする
しかし、その後、日曜夜に発生した交通外傷の患者(両側肺挫傷・右気管支断裂)に対し、専門医不在を理由に受け入れを断った事案(患者はその14分後に受け入れ先が見つかり、さらにその25分後に受け入れ先病院(直線距離にして倍の距離にある)に到着、治療を行いましたが、9時間後に呼吸不全により死亡)においても、上記判決と同様に「右応招義務は患者保護の側面をも有すると解されるから、医師が診療を拒否して患者に損害を与えた場合には、当該医師に過失があるという一応の推定がなされ、同医師において同診療拒否を正当ならしめる事由の存在、すなわち、この正当事由に該当する具体的事実を主張・立証しないかぎり、同医師は患者の被った損害を賠償すべき責任を負うと解するのが相当である」と判示し、病院 の過失を認めました(神戸地判平成4年6月30日判タ802号196頁)。
この判決は、衝撃をもって医療現場に受け取られました。このような事案においてまで、応召義務違反として民事上違法とそしられると、最早、救急医療が成り立ちえないからです。そして、その後、マスメディアによる「たらい回し」報道が繰り返され、現実に救急医療が崩壊の危機に瀕することとなったことは皆さんご承知の通りです。
■問題の本質は医療提供体制の不備
応召義務が問題となる事案の多くは、救急医療が必要な患者に対し、時間外や専門外、ベッド満床といった事情が生じた場合です(他の場合としては、診療報酬未払いの事案もあります)。
確かに、救急治療を要する患者・家族にとっては、一刻も早く治療を受けたいと願う気持ちは理解できます。しかし、救急医療体制の整備・強化についての責任は、国にあります。限られた人的・物的資源の中、労働基準法を無視した実務運用を行ってなんとか成り立っていた我が国の救急医療制度下において、医療従事者は文字通り献身的に診療に従事してきました。
このような状況において、同じく国の機関である司法が、患者保護をかざして、医療現場を非難することには欺瞞を感じざるをえません。
現在、大淀病院事件(※1) や、墨東病院 での妊婦死亡の事案(※2)等の、痛ましい事案が社会問題化されたことを契機に、救急医療体制の整備・強化がようやく国や地方自治体において議論されるようになったことは大きな前進と言えます。
※1 2006年8月7日に町立大淀病院で出産中だった32歳の女性が脳出血を起こしたが、転院先がなかなか見つからず死亡した事件
※2 2008年10月22日、東京都江東区に住む36歳の妊婦が転院先が見つからず、脳出血で死亡した事件
司法も、大淀病院事件判決(大阪地判平成22年3月1日判タ1323号212頁)において、「当裁判所の付言」として、「現在、救急患者の増加にもかかわらず、救急医療を提供する体制は、病院の廃院、診療科の閉鎖、勤務医の不足や過重労働などにより極めて不十分な状況にあるともいわれている。医療機関側にあっては、救急医療は医療訴訟のリスクが高く、病院経営上の医療収益面からみてもメリットはない等の状況がこれに拍車をかけているようであり、救急医療は崩壊の危機にあると評されている。社会の最も基本的なセイフティネットである救急医療の整備・確保は、国や地方自治体の最も基本的な責務であると信じる。重症患者をいつまでも受入医療機関が決まらずに放置するのではなく、とにかくどこかの医療機関が引受けるよ うな体制作りがぜひ必要である。救急医療や周産期医療の再生を強く期待したい」と判示しており、裁判所の理解も大きく進んできました。
■応召義務の法的位置づけ再考
しかし、現時点における応召義務の法的位置づけについては、複数の地裁判決があるのみであり、その内容も揺れていますので、医療者にとってすっきりしない状況と言えます。
ただ、応召義務違反を理由に民事責任を認めた先述の判決は、法理論的にも、契約関係に入っていない患者に対し、すべからく応召義務違反が問われ得るとすることは、いくら不法行為法の領域とはいえ、私人に課せられる義務の範囲を超越していること、「応召義務違反によって損害が生じた」といっても、無理をして患者に最善ではない治療を提供するより、ほかの適切な医療施設が受け入れてくれることを信頼することは不当とは言えないこと、、たまたま直後に受け入れ先が見つかれば、「よって生じた損害」がなくて、不運にも受け入れ先が見つからなければ「よって生じた損害」があるとされるのでは、規範たりえないこと等の問題があると言えます。
応召義務は、医師の倫理的規範として、救急処置を必要とする患者に対しては、可能な限り診察を断るべきではないと明記することはあってもしかるべきであると考えます。しかし、これまで述べてきた通り、応召義務が問題とされることの多い救急医療においては、問題の本質は医療提供体制の不備であり、その責任の所在は国にあります。また、国際的には必ずしも医師に対して応召義務を課しているわけではありません。従って、応召義務が取り上げられる事案の本質的な問題、また国際的な見地から考えても、人権侵害の程度が強過ぎることなどを鑑みて、「医師と患者の間での応召義務の効力」については、慎重に考えるべきではないでしょうか。
◆大磯義一郎(おおいそ・ぎいちろう)
1999年日本医科大医学部卒。同年より同大付属病院第三内科に入局し、消化器内科医として勤務していく中で、急激に進んだ医療現場への司法介入に疑問を感じ、2004年早大大学院法務研究科に入学。07年の卒業年に司法試験に合格。09年から旧国立がんセンターに勤務し、知的財産法務および倫理審査委員会業務などを行う。11年から帝京大医学部で、客員准教授として医療と司法の相互理解の促進をテーマとした「医療法学」の講義を行っている。弁護士としては、加治・木村法律事務所に所属し、医事紛争・病院法務・知的財産法務を専門に取り扱っている。
17.「忘却が一番怖い」「年単位で医師派遣を」◆Vol.6
被災3県以外から:被災地の現在・過去・未来
M3 2012年3月26日
m3.comの医師会員を対象にした今回のアンケートでは、被災地以外の44都道府県からも、(1)被災地の現在・過去・未来、(2)震災の教訓、(3)政府に一言、(4)県・市町村に一言、(5)全国の医療者へ、というテーマに分け、「400字以内」でコメントを募集した。まず(1)のコメントを紹介する。医療関連以上に多かったのが、福島第一原発や津波で被災した町の瓦礫処理や再生の問題に言及するコメント。医療関連を中心に、代表的なコメントを紹介する(調査の概要は、『被災3県医師、「8割は復旧」◆Vol.5』を参照)。
【被災3県以外から:被災地の現在・過去・未来 】
医療関連
・産業基盤の復興を早めることが求められていると感じる。医療政策も復興事業と同時に展開して行くことが重要(北海道、その他の公的病院、50代)
・被災から2カ月近く経った頃、我々の救護所に地元医師会の方がやって来て「いつまでいるのか?」と尋ねました。地元医療機関が復旧してきたので、無料の救護所がいつまでもいては営業妨害になるのですね。患者さんも自立に向けて以前の保険診療体制に戻るべきとは思います。しかし、被災者の方々からは「金もない、足もないのにどうしろと言うんだ」と言われました。災害医療で大変なのは初動ですが、難しいのは撤収のタイミングです(北海道、その他の公的病院、50代)
・東北地方は、基調としてずっと人口減少が続いている地域でした。流出は若年層で発生します。これが急速な高齢者人口比率の上昇による医療需要の増大と、将来的な見込みの薄さの両方をもたらしてきました。既存の医療機関の存続が既に難しく、規模縮小や民間移譲、統合合併の計画が数多く聞かれていました。今回の震災では、その傾向が一気に進んだという側面があります。ただし、被災の激しい地域のすぐ傍に、ほとんど被害らしい被害のなかった地域もあり、そういう地域の医療機関は、医師流出の中で相変わらず医師不足にあえいでいます。将来的な医療需要はさらに減少することは明らかですが、10年程度の中期的には増大するという難しい舵取りが迫られています。特に診療所の開設投資を最小化する工夫が求められ ており、それがなければこのまま崩壊へと進むことだろうと思います(北海道、その他、40代)
・1年が経過し、医師不足が叫ばれている。全国の都道府県の公的医療機関に勤務する医師には、身分・給与を保証したままで3カ月から1年単位で被災地の病院に派遣される医師がもっと多くてよいと思われる(滋賀県、公立病院、30代)
福島第一原発関連
・地震や津波は天災なので仕方ないと思える一方、放射能の拡散は人災でもあり、責任問題とか賠償とかが前面に出てしまう。しかし、天災に対する備えをしっかりしようと考えるのなら、同じように原子力発電所に対する備えをしっかりしようと考えて進んで行く道もあるのではないか。同じ規模の地震や津波にもびくともしない原子炉を作ることができて(実際そのような原子炉は今回の震災にも福島以外ではあったはず)、世界中に輸出できるくらいのものを作って行けば良いのではないか(東京都、大学病院、50代)
・被災3県の中で、原発被害を受ける福島の復興については、国、国民が責任を持って臨まなければならないと思う。住民の健康被害の問題では、被災地から転出した方には同様のサービスを享受できないと言った報道も耳にするので、そういった不公平にはならないような配慮を。また原発作業員の健康問題については、今後廃炉に向けた工程の中で、産業保健的な側面での検討も必要だと思われる(神奈川県、その他、30代)
・放射能によるネガティブイメージの払拭は困難であり、医療的にも過疎地域となる可能性が高い。今回を契機に放射能に対する専門科を増設するなど、被災した地域だからこそできる医療提供を開発してみてはどうか(静岡県、その他の公的病院、30代)
・セシウム汚染は、hot spotに対応するだけで十分であることを放射線学会の力を借りて、周知徹底すべきである。放射線科の核医学専門医は多分誰も、セシウムを恐れていないと思われる。セシウムの内部被曝こそ無視できるものであり、ヨードやSr、Coなどと混同されてはならない。核爆発が起こって核融合物質がばら撒かれたチェルノブイリとは比較にならない。この辺りを放射線科、核医学専門医を交えて、公開で討論してほしい。マスコミのバイアスのある討論会で結論ありきの議論は無意味。日本中が良識あるマスコミが早く目覚めてほしい(愛知県、その他の公的病院、60代)
・放射線の2次被曝を避けるために、政府が被曝地の食品、土地の買い取り、出産可能な年齢の女性、未成年の避難を徹底させるべき(愛知県、その他、50代)
・原発事故に関しては、被爆地で過ごした経験、被爆者医療の経験から、福島程度で、少なくとも成人には、大きな問題はない(長崎県、民間病院、50代)
その他
・絆・きずな・キズナと言いつつも、瓦礫の処理をほとんどの自治体が受け入れないし、受け入れたとしても、住民が反対運動を起こす。これが、日本人の本質なんだな、とつくづくいやな気分になる。痛みや悲しみを分かち合うのは、自分の領域以外に限るようだ。このような日本には、明るい未来などない。原発についても、いまだに地元の雇用に必要だから、などと言う。いったい、日本全体に関わる問題をなんと心得ているのだろうか。やはり、日本の将来は暗い(北海道、公立病院、50代)
・現場に行って協力できる人は限られている中で、それぞれの立場で被災地に対しできることを考えて実行していくしかないと思う。大切なのは常に頭で考え、現在だけでなく未来に向けて思い続けていくこと。忘却が一番怖いことだと思う。過去にできず、現在できなくても、未来になってできることが大なり小なり各個人に現れてくると信じている(群馬県、民間病院、50代)
・地震、津波被災と原発被害地は明確に区別して対策を立てるべきです。(1)地震、津波被災に対しては、将来への地震津波対策を策定すると同時に、早急に復興へ向けた対策が必要。優先順位からすれば、復興の方が先。まず瓦礫の処理、雇用の確保に向けた地場産業の支援。漁業関係の地域が多いので、港の整備、水揚げの確保、水産加工業の再建、加工品の販売ルートの確保等を、個々に行うのではなく、トータルビジョンを持ち、同時に、一気に行うこと。そのための資金を、震災前に事業を行っていた方々には、無担保無保証で、すぐに資金を用意すること。雇用が確保されなければ、人材の流失を来し、復興がさらに遅れます。(2)原発事故に関しては、現在もなお大量に放散されている放射線があり、累積蓄積被曝が続い ている。放射線発生源の対策と遮断。東電(国有しかないでしょう)、国がもっと早く補償金を支払うこと。危険地域の土地の国による買い上げ(東京都、その他、60代)
・被災地は、今後緩やかですが、必ず復興すると思います。むしろ、被災地以外の人たちが、がれきの処理に協力しないのは、沖縄に基地負担を押し付けておいて、自分のところに来るのは、拒否するという思考回路と同じと思います。被災地の人たちは、必ず前よりは、いい街に復興されると思います(愛媛県、民間病院、60代)
18.政府の初動の遅れが"人災"を生む-
小川彰・岩手医科大学学長に聞く◆Vol.3
復興は緒に就いたばかり、息の長い支援を
M3 2012年3月24日
私は迅速に立ち上がるときに、なぜ私はほとんど気絶するか?
――宮城県や市町村の復興計画の作成、実行状況は。
岩手県は昨年8月に、「岩手県東日本大震災津波復興計画」を策定しました。住民が戻らないと、医療は再生できません。どんな町が再生されるかで、住民が戻るかどうかが決まる。しかし、今の国が一番悪いのは、地方自治体に計画を出すように言うものの、お金をいったいいくら出してくれるかが分からないこと。岩手県のようにリアス式海岸の地域は、町全体を高所移転しようとしても、高台の平地は既に使われている。山を削って高台に平地を作る以外に方法はない。今の地方自治体にそんなお金があるわけではない。国が、「あなたの町には、これくらいの予算を付ける」といったガイドラインを提示しないと、計画も作成できない。
首長さんたちも困っています。住民は元の町に住みたいと言う。中には、「平地に戻りたい」という人もいる。しかし、必ずまた災害が起こる。スーパー堤防を作っても、解決にはならない。田老町の高さ10m、しかも二重の防潮堤は津波災害の最後の砦と言われ、全世界から視察に来た。にもかかわらず、30mを超す津波が来た。
――約1年が過ぎ、今は第四段階の入り口ですが、今後、第五段階に至るにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。
今、言ったように、何より政府の対策が遅れている。当初は就業意欲があった方も、町の再生などの遅れから、仕事も見つけにくく、次第に失いつつある。一度、乱れてしまった人心を元に戻すのは大変で、ものすごい労力がかかります。国は早期からお金を出せばよかった。当初は「今回の復興に、30兆円は必要」といっていた。しかし、2次補正である程度、付けるとされていたのが、菅前首相が「1.5次補正」と言い出してから話が狂った。「3次補正で対応する」とされ、2次補正の予算は1兆6000億円になった。働きたいと思っている人の心を踏みにじってしまったことが、今の事態を招いている。その意味では国の責任は極めて重い。
医療面では、先ほども言ったように、仮設住宅に移ったからと言って、問題が解決したわけではありません。「生活不活発病」はいまだに問題。高血圧、高脂血症、糖尿病の患者は増えている。こうした事態を予想して、日本脳卒中学会では昨年7月の段階で、「被災者の生活・健康環境の改善」と「強力で有効な脳卒中予防体制の整備」を求める声明を出しています(同学会のホームページ、PDF:101.18KB)。しかし、政府はこれに対する対策を一つも打ち出していません。
今回の経験は、日本全体の問題です。初動の遅れがこうした二次災害につながっています。これはまさに人災。一年経っても復興が進まない。この遅れが事態を悪化させるのは明らか。本当に腹立たしい限りです。
後藤新平の「帝都復興院」は関東大震災からわずか26日後にできた。今の日本でなぜこんなに対応が遅いのか。復興庁が発足したのは2月10日で、11カ月かかっています。しかも、復興庁は現場の「前線基地」になると思ったら、そうではない。復興庁がやるのは、企画立案や各省庁の総合調整であり、「実施権限」を持たない。我々現場にとって非常に問題なのは、今までは政府と各省庁にお願いすればよかったのに、今度は復興庁が一つ加わった点です。本来なら、「口は出すな、金を出せ」で現場に任せればいいのです。
――復興庁ができれば、中央まで行かなくても、物事がスピーディーに解決できる。それが期待されていたはずです。
しかし、実際にはそうではない。対応が遅れれば遅れるほど、人の心も荒廃し、すさんでしまう。荒廃してしまった心を元に戻すには、ものすごく時間とお金がかかる。生活保護と同様で、単にお金を出して、保護すればいいわけではなく、社会にいかに復帰してもらうかが極めて重要。
――仮設住宅に移った次は、町の再生を待ち、移住することになりますが、現時点では先が見えない。復興・再生計画における大学の役割は大きいけれども、行政が動かないことには進まない。
大学は医療に関しては取り組みますが、医療も結局は町の復興が前提であり、そこに我々が口を出せるわけではない。医師会も言えるものでもない。
――それは当事者である町、地域住民が考えていくべきもの。
ただ先ほども言いましたが、国が「あなたの町には、これくらいの復興予算を付ける」というガイドラインを示さない限り、話が進みません。
――大学としては、「いわて過疎地被災地新医療モデル」を柱に、医療面での支援、復旧・復興に取り組み、大学自体も、災害に強い体制にしていく。
ただ、災害時の危機管理をマニュアル化しても、どんな災害がどのように起きてくるかをすべて想定できるわけではない。
――大学として、マニュアル等を見直した点はあるのでしょうか。
見直したというわけではありませんが、今回の震災の教訓として、様々な地方自治体に言っているのは、大学と連携した組織作りを日ごろからやっていかないと、災害対応はうまくいかないということです。
――マニュアルなどを作っても、顔が見える関係でないと、実際には動かない。
東京や東京近郊が心配なのは、司令搭が多すぎる点です。複数の大学があると、「どこがイニシアティブを取るのか」という話になります。
――最後に全国の医療者に対して、おっしゃりたいメッセージは。
震災直後にm3.comで、私のメッセージを取り上げてもらいましたが、おかげさまで非常に強い発信力があった(『「現地は想像を絶していた、いまだ薬、ガソリン不足」』を参照)。例えば、「今からでも遅くはない。私が行って助けることができると分かった」と言って、岩手に来てくれた方がいた。来てみたら、とても数カ月で話が済むようなものではないと。もともと岩手に縁はない方ですが、今は県立病院に勤務しています。
それ以外にも支援の先生方がいらしていますが、災害医療と過疎地医療のどこにボーダーラインがあるのか。「医師不足だから来てもらいたい」と言うのか、それとも「災害医療のため」と言うのか。しかし、今回の場合は最初から、DMATが行うような急性期救急医療への対応はほとんど必要なく、高齢者医療、生活習慣病への対応が主だった。"ハブ"の県立病院で今、高齢者を診察している限りは、そこが被災地かどうかは分からない。だから、"ハブ"に来てもらう先生には、被災地を回って、「こうしたバックグラウンドの中で、病院医療がある」ことを理解してもらっています。
また、岩手県の被災地の復興、医療復興もまだ進んでいない。緒に就いたばかりです。岩手県は全体で見ても医師不足ですが、その中で、内陸部の病院が沿岸部をバックアップしている状態。したがって、医師、コメディカルの方だけでなく、心のケアに携わる方、介護や福祉に携われる方などを含めて、「息の長い支援」をお願いいたします。これは震災直後から言っていたことであり、今もまた言わざるを得ないのは辛いことです。ただ、心のケアを考えれば、10年、数十年かかるものです。息の長い支援をお願いしたい。
確かに今回の災害は不幸でしたが、不幸だと言っていても、話は前に進みません。それをいくらかでもプラスのスパイラルにつなげたい。だから、復旧ではなく、「再生」、新しいものを新しく作りたいと考えています。
19.「特集 震災医療 成果と反省」転載 Vol.11医療も町の復興も手助けしたい
現場医師10人「私が今、考えること」 石巻市雄勝診療所 小倉 健一郎氏
日経メディカル2012年3月26日
かつて私は、関西の病院で整形外科の勤務医をしていました。その後、阪神・淡路大震災を機に災害医療に興味を持ち、非常勤の医師を続けながら海外の被災地や発展途上国で医療支援に携わってきました。同時に、様々な病院で小児科や形成外科、麻酔科、耳鼻科など、他科の知識や技術を身に付けました。被災地や途上国での活動を経験して、「何でも診る」ことが必要だと実感したからです。
東日本大震災では、医療支援団体の一員として仙台市や宮城県南三陸町での短期の医療支援に参加。ただ、昨年5月に公立志津川病院(南三陸町)の支援をしていた際、町の壊滅状態を目の当たりにして、長期にわたる支援が必要だと痛切に感じました。いつか僻地医療に携わりたいと思っていたのも動機となりました。
宮城県の公募を通じ、震災後に無医地区となっていた石巻市雄勝町に赴任しました。2011年10月から仮設の石巻市雄勝診療所で外来診療と訪問診療をしています。患者の多くは山間部や高台に住む高齢者。毎日午前中は20人程度を外来で診て、午後は訪問診療に回ります。診療所では、生化学検査や超音波検査をできるので、その範囲で診療を続けていますが、近くに病床がないので不便を感じることもあります。
個人的には医療だけでなく、雄勝町の復興も手助けできないかと考えています。これまでの経験や自分の人脈を生かして、できることをしていくつもりです。2~3年後には正式な診療所が建ちます。それまで診療を続け、その時点でその先も残るかどうかを決めようと思っています。(談)
20.とっても専門医 Vol.1初期研修後、専門医プログラムに再びマッチング?
日経メディカル2012年3月26日
「取ってもメリットがない」といった不満は数あれど、多くの医師がこぞって目指す、専門医資格。オーソドックスな"2階建て"か、広~い"平屋"か、はたまた天まで突き抜けるペンシルビルか。あなたはどう建てる?
手間とお金がかかるのに、取ってもメリットがない。質の担保がない。領域が重複したり細分化しすぎて、数が多すぎる…。とかく批判の多い日本の専門医制度。この現状を改善するため、「2015年には、新しい制度をスタートさせたい」。79の医学学会が加盟する日本専門医制評価・認定機構理事長の池田康夫氏は、今後の見通しをこう語る。
機構が目指すのは、患者の目線から見て分かりやすい専門医制度。そのために現段階で決まっている方針は、2階建ての制度設計だ(下図)。基本領域として位置づけた専門医が言わば1階部分。2階に相当するサブスペシャリティの専門医資格の取得には、基本領域のいずれかの専門医(あるいは認定医)であることが条件となる。
下図の各領域に並ぶ専門医は、各学会の専門医制度や研修プログラムを機構が評価して"認定"したものだ。新制度スタート時には、専門医の認定や研修プログラム・施設の評価といった業務は学会と切り離し、中立的第三者機関において、それぞれの専門医について設けた委員会が担当するという構想だ。
日本専門医制評価・認定機構が現在認定している基本領域は18診療科。これに「総合診療科」あるいは「家庭医療科」が加わる方向で議論が進んでおり、最終的には19の診療科で固まりそうだ。
2階部分のサブスペシャリティの認定は現在17診療科で、これから増える予定。2階の上に3階をつくるのか、エコーや内視鏡など診療科を横断するような分野の位置づけをどうするかといった点は現在検討中。
患者目線での分かりやすさという観点からは、「なぜ、この診療科がここに?」といった疑問もあるかもしれないが、専門医制度をいち早く整備して質の担保に独自に努めてきた学会もあるなど、歴史的な背景もあるようで…。
基本領域専門医の表示は1つに
もっとも、ここまで読んで、「今の仕組みとどう変わるの?」と疑問に思う方は多いかもしれない。これから専門医を取得するという立場から、まず押さえておくべきは、新制度のデザインに当たっての大きな目的。それは患者の目線で、医師がどんなトレーニングを受けてきて、どれほどの技量を持っているかを分かりやすく示すということだ。
広告表示についても、「少なくとも基本領域については、『機構認定の専門医』として表示できるものは1つに限りたい」と池田氏は語る。
疑問や不満を感じながらも、多くの医師が専門医資格を取得しているのは医師のキャリアにおける必要条件と感じてのことだろう。患者を含めて一般への情報公開という観点からも、取得の必要性はさらに大きくなるといえる。なお、診療報酬への反映など、専門医資格の具体的なメリットについては「重要な課題であり、検討を続けていく」(池田氏)。
今後の若手医師にとって、まず大きな変化になりそうなのが、後期研修と専門医研修の関係。初期臨床研修修了の時点で、基本領域の診療科いずれかを選び、機構が認定した専門医研修プログラム(研修施設)に応募。各プログラムの受け入れ数の調整は機構が担う─。こういった仕組みを池田氏は構想している。事実上、初期研修に続き2回目のマッチングを行うというこ とだ。どの地域にどのような研修プログラムがあるかも明示する必要があり、各プログラムの指導体制や研修内容を評価するシステムの検討も機構は進めている。
厚生労働省は「専門医の在り方に関する検討会」で、今後の専門医制度について、今夏に中間とりまとめ、2012年度中に最終報告書を出す予定だ。機構が掲げるこれらのビジョンがどこまで反映されるか。大きな変化が見込まれる専門医制度の情報も怠りなくアップデートしたい。
◆池田康夫氏
Yasuo Ikeda
日本専門医制評価・認定機構理事長、早稲田大学理工学術院教授●1968年慶應義塾大学卒。91年慶應義塾大学教授、2005年慶應義塾大学医学部長。08年に社団法人日本専門医制評価・認定機構が発足し、理事長に就任。
21.尊厳死について初の法案を超党派議連が公表
延命措置の差し控えを条件付きで免責
日経メディカル2012年3月24日
超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」(会長:参議院議員の増子輝彦氏)は2012年3月22日、総会を開催し「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」を公表した。延命措置の差し控えなどについて、法案がまとめられたのは初めて。
同法案は、満15歳以上で終末期を迎えた患者が、自らの意思に基づいて延命措置を差し控える際に必要な事項を定めたもの。終末期については、「行い得る全ての適切な治療を受けた場合であっても回復の可能性がなく、かつ死期が間近であると判定された状態にある期間」と定義し、2人以上の医師によって判定するとした。また、延命措置については、疾患の治癒や緩和ではなく、「生存期間の延長を目的とする医療上の措置」と定義した。
延命措置を差し控えることができるのは、患者が差し控えを希望する意思を書面などで示している場合であり、かつ、患者が終末期との判定を受けた場合。その際、医師が民事上、刑事上の責任を問われないとする免責事項も盛り込んだ。
同法案は既に実施されている延命措置の中止を対象外としているほか、家族の判断ではなく、あくまで患者の意思がある場合のみを対象とするなど、「尊厳死としては、非常に狭い範囲を対象としたものだ」(増子氏)。
総会では関係者のヒアリングも実施。日本尊厳死協会の鈴木裕也氏は「医師の判断による行き過ぎた医療が行われている実態もあり、患者の意思を尊重することが重要だ」と法案に賛成を表明。これに対し、DPI(Disabled Peoples'International)日本会議(議長は三澤了氏)の橋本操氏らは「呼吸器や経管栄養は使ってみなければ良さが分からない」「法案について、強い危機感を持って受け止めている」「議論が拙速だ」などとして強い反対の意を示した。
このほか、日本弁護士連合会人権擁護委員会第4部会長の平原興氏は「患者の自己決定権やインフォームドコンセントの保障など、前提となるべき制度が整備されていない。さらなる議論が不可欠だ」として事実上、法案に反対した。また、日本医師会常任理事の藤川謙二氏は「問題の提起にとどめるべきではないか」と慎重な姿勢を示した。
法案は今後、各党で議論した上で、今通常国会での提出を目指す考え。ただ、ヒアリングでも出た反対意見にどこまで対応するのかを含め、法案提出までの道筋は不透明だ。
22.白米の摂取量が多いと2型糖尿病リスクが上昇
摂取量が多い東洋人ではより顕著、メタ分析の結果(BMJ誌から)
日経メディカル2012年3月26日
白米摂取量と2型糖尿病の関係を調べた複数の前向きコホート研究のメタ分析で、特に東洋人では、白米摂取量が多いと2型糖尿病リスクが上昇すること、両者の間には用量反応関係があることが明らかになった。米Harvard公衆衛生大学院のEmily A Hu氏らが、BMJ誌電子版に2012年3月15日に報告した。
穀類のGlycemic Index(GI)は精白度の違いにより大きく異なる。白米は64(SDは7)、玄米は55(SDは5)、全粒小麦は41(SDは3)、大麦は25(SDは1)と報告されている。また、白米は、米を主食とする人々においてグリセミック負荷(GI/100×炭水化物重量)を高める主な要因であるとの報告もある。大規模観察研究では、GIまたはグリセミック負荷が高い食事は2型糖尿病リスクを高めることが示されている。
これまでにも、白米摂取と2型糖尿病の関係を調べた研究は複数行われていたが、研究の規模や対象集団の白米摂取量、登録者の特性などが様々で、一貫した結果は得られていなかった。加えて、用量反応関係があるのかどうかも明らかでなかった。そこで著者らは、白米の摂取と2型糖尿病の関係を調べた前向きコホート研究を対象として、これらの関係を明らかにし、用量反応関係の有無を調べるためのメタ分析を実施した。
MedlineとEmbaseに2012年1月までに登録された研究の中から、ベースラインで糖尿病ではないと自己申告した人々を追跡して、米の摂取量と2型糖尿病リスクの関係を報告していた前向きコホート研究を選出。それらに記載されていた引用文献も調べた。
4件の研究が条件を満たした。それらは、東洋人(中国人、日本人)と西洋人(米国人、オーストラリア人)を対象に7件の比較を行っていた。
白米の平均摂取量は試験ごとに大きく異なっていた。中国の研究では、1日の平均摂取量が調理後重量にして625g(4皿)。これに対し、米国の研究の対象者の98%、オーストラリアの研究では71%が、1週間に5皿未満しか摂取しておらず、平均摂取量は1~2皿/週だった。
4件の研究は、計35万2384人を4~22年追跡していた。その間に計1万3284人が2型糖尿病を発症していた。それぞれの研究が設定した白米摂取量に基づく層別化の基準をそのまま利用して、最低摂取群に対する最高摂取群の糖尿病リスクを求め、東洋人と西洋人に分けて、プールした相対リスクを推定した。
米国で行われた3件の比較は、いずれも、1日の摂取量が5.3g未満を最低摂取群、112.9g以上を最高摂取群とし、オーストラリアの研究は23g/日未満を最低摂取群、56g/日以上を最高摂取群としていた。中国で行われた研究は500g/日未満を最低摂取群、750g/日以上を最高摂取群としていた。日本で行われた2件の比較は、男性を対象とする研究が315g/日以下を最低摂取群、560g/日超を最高摂取群に、女性を対象とする研究は278g/日以下を最低摂取群、437g/日以上を最高摂取群に設定していた。
東洋人では、白米最低摂取群と比較した最高摂取群の2型糖尿病相対リスクは1.55(95%信頼区間1.20-2.01)と有意なリスク上昇を示した。同様に西洋人についても求めたところ、1.12(0.94-1.33)になった。東洋人と西洋人のリスクの差は有意(P=0.038)だった。全体では、相対リスクは1.27(1.04-1.54)になった。
用量反応関係を調べたところ、白米摂取が1日1皿増加当たりの2型糖尿病の相対リスクは1.11(1.08-1.14、線形傾向のP<0.001)になった。
得られた結果は、白米摂取量と2型糖尿病リスクの間には有意な関係が見られること、この関係は白米の摂取量が多い東洋人(中国人と日本人)の集団でより顕著に見られることを示した。
原題は「White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review」
23.術後にオピオイドを使用した人は1年後も使用率が高い
NSAIDsも同様の傾向、術後疼痛リスクの低い短期入院手術における検討(Arch Intern Med誌から)
日経メディカル2012年3月24日
術後疼痛リスクが高くない外来手術を受けた高齢患者のうち、術後にオピオイドを処方された患者は、オピオイドを処方されなかった患者と比べて、1年後もオピオイドを使用しているリスクが1.44倍に上ることが、カナダToronto大学のAsim Alam氏らの後ろ向きコホート研究で明らかになった。術後に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の処方があった患者でも、処方がなかった患者に比べ、1年後のNSAIDs使用リスクは3.74倍になっていた。論文は、Arch Intern Med誌2012年3月12日号に掲載された。
外来で処方される鎮痛薬の中で最も一般的なのが、NSAIDsとオピオイドだ。どちらの薬剤にも有害事象のリスクがあり、オピオイドの場合は長期に使用すると依存を引き起こす危険性もある。にもかかわらず、オピオイド系鎮痛薬の過剰な処方は少なからず行われている。
著者らは、そうした鎮痛薬を使用した場合に有害事象が現れやすい高齢者を対象に、短期入院手術後の予防的な鎮痛薬の処方が長期使用に関係するかどうかを調べる後ろ向きのネステッドケースコントロール研究を実施した。
カナダのオンタリオ州の住民の健康に関する情報を登録している複数のデータベースを関連づけて、97年4月1日から08年12月31日までに、術後疼痛リスクが低い、日帰りまたは短期入院手術(白内障手術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、経尿道的前立腺切除術、下肢静脈瘤抜去術のいずれか)を受けた66歳以上の高齢者を抽出した。それらの患者の中から、入院前1年間に鎮痛薬の処方歴がなく、退院後7日以内にオピオイドの処方を受けていた患者を選出。全員を最大425日追跡して、手術日からちょうど1年目となる日の前後それぞれ60日(手術後305日~425日)のあらゆるオピオイドの処方の有無を調べた。同様に、術後と1年後のNSAIDsの処方についても調べた。
年齢、性別、Charlson併存疾患指数、社会経済学的地位、介護施設入所、手術を受けた病院の種類などを交絡因子候補とし、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて術後の鎮痛薬使用と1年後の使用の関係を調べた。
短期入院手術を受けたオピオイド使用歴のない患者39万1139人のうち、2万7636人(7.1%)が術後にオピオイドの処方を受けていた。白内障手術を受けた患者ではその割合は4.9%と少なかったが、腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた患者では65.3%と多かった。経尿道的前立腺切除術を受けた患者では18.1%、静脈瘤抜去術を受けた患者では50.8%だった。
手術から1年後にオピオイド処方があったのは3万145人(全体の7.7%)で、術後と1年後の両方で処方を受けていたのは2857人(術後処方患者の10.3%)だった。術後にオピオイドを使用した患者は、そうでない患者に比べ、1年後もオピオイドを使用しているリスクが44%高かった。調整オッズ比は1.44(95%信頼区間1.39-1.50)。
術後、最も多く処方されていたオピオイドはコデインで、全体の93.4%を占めた。2番目に多かったのはオキシコドン(5.4%)だった。1年後のオピオイド処方に占める割合はそれぞれ87.5%と15.9%で、オキシコドンの使用増加が目立った。また、術後にオピオイドの使用歴があった患者は、1年後の時点でより強力な長時間作用型のオピオイドの処方を受けている傾向が強かった。オキシコドンのほか、経皮的フェンタニルの使用者も0.01%から1.6%に増えていた(いずれも複数回答)。
NSAIDsについての分析は、手術時に使用歴がなかった38万3780人の患者を対象とした。術後にNSAIDsを処方されていた患者は1169人(0.3%)だった。手術から1年目には3万80人(7.8%)が処方を受けていた。術後と1年後の両方でNSAIDsの処方を受けていたのは285人(術後処方患者の24.4%)で、術後にNSAIDsを使用していた患者が1年後もNSAIDsを使用しているリスクは、術後処方がなかった人々の4倍弱であることが明らかになった。オッズ比は3.74(3.27-4.28)。
術後の疼痛が大きいと予想される手術を受けた患者に対する疼痛管理が不十分であることを示した研究は複数ある。一方で、深刻な疼痛はないと考えられる手術を受けた患者にも、本人の希望に沿って標準用量の鎮痛薬が処方されることがある。本研究では、術後にオピオイドを処方された患者の10%超、NSAIDsを処方された患者の約25%が、1年後も同じ種類の薬剤の処方を受けていた。著者らは「これらの薬剤の持続的な使用を減らすために、疼痛リスクの低い患者に対する鎮痛薬の漫然とした処方は控えるべき」と述べている。
原題は「Long-term Analgesic Use After Low-Risk Surgery: A Retrospective Cohort Study」
24.静脈血栓塞栓症の予防で内科入院患者の30日死亡率は低下するか?
【原題】Does VTE Prophylaxis Lower 30-Day Mortality in Medical Inpatients?
Journal Watch Hospital Medicine日経メディカル2012年3月26日
In a randomized trial, enoxaparin failed to do so.
Despite widespread use of low-molecularweight heparin to prevent venous thromboembolism (VTE) in medical inpatients, the effect of this practice on mortality is unclear. In a trial conducted mainly in China and India, 8300 acutely ill medical inpatients were given graduated compression stockings and, additionally, were randomized to receive daily enoxaparin (40 mg) or placebo during hospitalization (6―14 days). Patients were eligible for enrollment if they had decompensated congestive heart failure; active cancer; or severe systemic infection plus chronic lung disease, obesity, previous VTE, or advanced age (>60).
All-cause mortality at 30 days, the primary outcome, was about 5% in the two groups. All other efficacy endpoints (e.g., cardiopulmonary death, sudden death, pulmonary embolism) also occurred with similar frequency in both groups at 14, 30, and 90 days. Bleeding events occurred only slightly but statistically significantly more often with enoxaparin than with placebo (2.2% vs. 1.5%).
COMMENT
What should we make of this completely negative study? Were the compression stockings effective, thus diminishing the benefit of add-on enoxaparin? Can we generalize from these mainly Asian patients to other populations and other countries? The authors conclude that "pharmacologic thromboprophylaxis continues to have proven benefits in preventing VTE" in medical inpatients, but this comment refers mainly to preventing asymptomatic deep venous thrombosis.
A recent guideline from the American College of Physicians questions the trend to provide near-universal VTE prophylaxis to medical inpatients (Ann Intern Med 2011; 155:625). This new study gives us further impetus to re-examine that practice.
― Allan S. Brett, MD, Journal Watch General Medicine
Kakkar AK et al. Low-molecular-weight heparin and mortality in acutely ill medical patients. N Engl J Med 2011 Dec 29; 365:2463.
25.術後の赤血球輸血:多いほど良いとは限らない
【原題】Postoperative RBC Transfusions: More Is Not Better
Journal Watch Hospital Medicine日経メディカル2012年3月25日
A liberal red blood cell transfusion strategy did not improve outcomes after hip fracture surgery.
The optimal threshold to initiate postoperative red blood cell (RBC) transfusion therapy in older surgical patients remains controversial. In a multicenter nonblinded trial, U.S. and Canadian researchers enrolled more than 2000 older patients (mean age, 82) at high cardiovascular risk whose hemoglobin (Hb) levels were <10 g/dL after hip fracture surgery. Patients were randomized to a liberal transfusion strategy (transfusion at Hb <10 g/dL) or to a restrictive transfusion strategy (transfusion when anemia symptoms developed or at physicians' discretion for Hb <8 g/dL).
Patients in the liberal group received an average of three times more RBC transfusions than did the restrictive group. No differences were noted between the groups in the primary outcome (60-day mortality or inability to walk across a room alone) or in any other measure.
COMMENT
This study supports withholding red blood cell transfusions in older patients who undergo hip fracture surgery until hemoglobin drops below 8 g/dL or symptoms develop. That these older patients had known cardiovascular disease (63%) or risk factors is especially reassuring. The bigger question is whether these findings can be extrapolated to other postoperative patients: Randomized trials in cardiac surgery patients and critically ill patients have yielded a similar conclusion (JAMA 2010; 304:1559, and N Engl J Med 1999; 340:409). A restrictive RBC transfusion policy should be recommended and promoted extensively.
― Aaron J. Calderon, MD, FACP
Carson JL et al. Liberal or restrictive transfusion in high-risk patients after hip surgery. N Engl J Med 2011 Dec 29; 365:2453.
26.静脈血栓塞栓症予防を全ての患者に実施することを支持するエビデンスはない
【原題】Evidence Doesn't Support Universal Prophylaxis for VTE
Journal Watch Hospital Medicine日経メディカル2012年3月24日
The American College of Physicians recommends risk assessment for venous thromboembolism first.
Several national organizations advise treating hospitalized medical patients routinely with unfractionated heparin (UFH) or low-molecular-weight heparin (LMWH) to prevent venous thromboembolism (VTE). In a new guideline, the American College of Physicians suggests that evidence does not support routine prophylaxis and makes three recommendations for VTE prevention in hospitalized medical and stroke patients:
・ Prophylaxis with UFH or LMWH should be based on risk and benefit and is unnecessary in patients with low VTE risk.
・UFH versus LMWH: Data do not favor the use of one agent over the other.
・Use of graduated compression stockings is not advised because they are not effective in preventing VTE or in preventing mortality, and they are associated with lower-extremity skin breakdown.
COMMENT
Given that low-risk patients do not benefit from VTE prophylaxis, this new guideline does not support universal use of VTE prophylaxis in hospitalized medical patients. A measured approach would be to avoid prophylaxis in patients without obvious risk factors for VTE and to initiate UFH or LMWH in patients with at least one risk factor and without elevated risk for bleeding. Although many risk assessment tools are available, evidence is insufficient to endorse any single tool. Notably, the guideline concludes with this provocative statement: "Because no standard, accepted formula for risk assessment exists to identify which medical patients are likely to benefit from VTE prophylaxis, the decision is best left to physician judgment, and performance measures targeting all patients are inappropriate."
― Jamaluddin Moloo, MD, MPH, Journal Watch General Medicine
Qaseem A et al. Venous thromboembolism prophylaxis in hospitalized patients: A clinical practice guideline from the American College of Physicians. Ann Intern Med 2011 Nov 1; 155:625.
27.心房細動患者の脳卒中と死亡リスク:新規心筋バイオマーカーの予測能
RELYサブ研究
CareNet2012年3月26日
スウェーデン・ウプサラ大学のZiad Hijazi氏らは、1万8,000例以上の心房細動患者が参加したRELY試験(dabigatranのワルファリンに対する脳卒中予防の非劣性を検討した前向き多施設共同無作為化試験)の約3分の1を占めるサブグループを対象に、新規心筋バイオマーカーのトロポニンI値とNT-proBNP値の、心血管イベントとの関連についての検討を行った。結果、両マーカー高値が、脳卒中および死亡増大リスクの独立予測因子であることが示され、その予測能は、現在使われている臨床指標によるリスク予測を改善するのに有用であることが示唆されたという。
トロポニンI、NT-proBNPは独立予測因子
RELYサブ研究は、6,189例を対象に、同群におけるトロポニンI値とNT-proBNP値が高値を示した患者の割合と、それらの人々の心血管イベント発症について評価が行われた。サブ研究参加者は、心房細動患者で脳卒中リスクを1つ以上(脳卒中かTIA既往、うっ血性心不全または左室駆出率 主要有効性アウトカムは、致死性・非致死性脳卒中、全身性塞栓症とし、副次有効性アウトカムは、総死亡、血管性・非血管性死亡などが検討された。主要有効性アウトカムは重大出血であった。
アウトカムは、確立している心血管リスク因子、CHADS2とCHA2DS2-VAScリスクスコアについて補正したCox比例ハザードモデルによって評価された。
おもな結果は以下のとおり。
●参加者は、トロポニンI値に基づき、 ●またNT-proBNP値に基づき、1,402ng/L群の4分位に階層化された。
●追跡期間中央値2.2年間で、脳卒中または全身性塞栓症を発症したのは183例であった。
●脳卒中発症率とトロポニンI値との独立した関連が示された。同値最高値群の発症率は2.09%/年で、非検出群(0.84%/年)に対するハザード比(HR)は1.99(95%CI:1.17~3.39)であった(p=0.0040)。
●また、NT-proBNPについても独立した関連が示された。同値最高四分位群の発症率は2.30%/年で、最低四分位群(0.92%/年)に対するHRは2.40(同:1.41~4.07)であった(p=0.0014)。
●両バイオマーカーは、血管性死亡率との独立した関連も認められた。トロポニンI値最高値群(6.56%/年)の非検出群(1.04%/年)に対するHRは4.38(同:3.05~6.29、p ●血栓塞栓症イベント複合のリスク予測能は、従来リスク因子のみの場合(C統計値:0.68)から両バイオマーカーを用いることで(同:0.72)有意に増強した(p [監修者のコメント]
非弁膜症性心房細動患者において、新規バイオマーカーである高感度トロポニンとNT-ProBNPが脳卒中さらに心血管死亡の独立した予測因子になることを示した。
この関連は、従来のリスク因子より算出されるCHADS2スコアやCHA2DS2-VASスコアとは独立していた。
本研究では、非弁膜症性心房細動患者の約2/3以上に高感度トロポニンが検出されている。 これまで、高感度トロポニンは、急性冠症候群、安定型狭心症、さらに心不全患者や、高齢者や地域住民においても検出され、その軽度高値は予後不良を予測することが報告されている。
通常、CHADS2スコア2点以上は抗凝固療法の適応となるが、本研究では0-1点でも2つのバイオマーカーが高い群では、CHADS2スコアが高くてもトロポニンやNT-proBNPが低い群よりも高かった。さらに、CHADS2スコアやCHA2DS2-VASスコアに、これらの心臓バイオマーカーを加えた場合にリスク予測能が増加した。
高CHADS2スコアで心臓バイオマーカーが高値群では、より強い抗凝固療法や他の心血管保護効果があるレニン・アンジオテンシン系抑制薬、スタチンなどの薬物療法の強化が望ましいと考える。
今後、これらのバイオマーカーを加えた新規の心房細動リスクスコアが作成されるかもしれない。
([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
28.房室結節アブレーション:心房細動を伴う心不全患者に有効か?
CareNet2012年3月26日
心房細動を伴う心不全患者に対する房室結節アブレーションは、薬物療法と比べて、全死因死亡と心血管死をともに大幅に減少させ、NYHA心機能分類を改善することが示された。オーストラリア・アデレード大学心臓病センターのAnand N. Ganesan氏らが、2010年までに発表された6試験の結果についてのシステマティックレビューの結果、報告した。収縮不全や症候性心不全、持続性QRS時間が有意な洞調律の患者における心臓再同期療法(CRT)のエビデンスは確立しているが、心房細動を伴う心不全患者では確立されていない。そうした中で最近、これら患者群のアウトカムが、房室結節アブレーションにより改善することが示唆されていた。
全死因死亡リスクは0.42倍、心血管疾患死リスクは0.44倍に
文献レビューは、2010年9月15日までの電子データベースと文献リストを対象とし、2名のレビュワーがそれぞれ、引用分タイトル、要約、論文を評価し、症候性心不全や左室同期不全に対するCRTを受けている心房細動患者で房室結節アブレーションを実施しアウトカムが報告されている試験を抽出した。
抽出した試験の結果について、全死因死亡、心血管死について解析した。
おもな結果は以下のとおり。
●6試験の被験者合計は768例であり、そのうち房室結節アブレーションを受けた患者は339例であった。残りの429例は、心拍数減少のみを目的とした薬物治療が行われていた。
●CRTを受けている心房細動患者への房室結節アブレーションは、全死因死亡リスクを有意に減少した(リスク比:0.42、95%CI:0.26~0.68、p ●また、心血管疾患死リスクも有意に減少した(同:0.44、0.24~0.81、p ●NYHA心機能分類の平均値についても、有意に改善した(同:-0.52、-0.87~-0.17)。
[監修者のコメント]
本研究は、心臓再同期療法(CRT)を受けている心房細動を合併する心不全患者では、房室結節アブレーション(AVNA)により死亡リスクと心血管死亡リスクが約半分に減少することが示された。
さらに、AVNAにより、NYHA心機能分類の改善もみられている。 しかし、AVNAによる左心機能の改善は、死亡予後やNYHA分類の改善とは関連がなかった。
AVNAは心収縮能を改善するといわれているが、その機序の1つは心室リズムを規則正しくし、心室レートを下げることにより、さらに融合心室拍動を減少させることにより、同期療法の質を上げることなどが考えられている。
AVNAは心房細動患者の心室調律コントロールに確立された治療法であるが、CRT患者であまり行われなかった。その理由は、全調律がペースメーカー調律依存になり、左室リモデリングが進展することが危惧されたからと考えられる。 しかし、両室ペーシングの場合はその心配は少ないと考えられる。
今後、本研究は観察研究であることから、今後、本研究から得られたエビデンスを無作為化比較試験で証明されると、心房細動を合併するCRT患者では、AVNAが標準的治療となるであろう。
([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
29.Edwards, Medtronic Heart Valves Found Safe in Sweeping Studies
Bloomberg2012年3月24日
Novel devices from Medtronic Inc. (MDT) and Edwards Lifesciences Corp. (EW) that repair damaged aortic valves without open-heart surgery safely helped patients in two of the largest and longest reviews of the technology.
Medtronic's CoreValve eased heart-failure symptoms in a study of 1,015 patients with severe aortic stenosis, according to findings released today at the American College of Cardiology meeting in Chicago. After six months, 87.2 percent were alive with few complications, a reassuring result given their age and illness, said Axel Linke, professor of cardiology at the University of Leipzig Heart Center in Germany.
A review of 399 patients given Edwards' Sapien device found a 10 percent death rate within a month of treatment, with the majority of survivors subsequently dying from non-cardiac causes. The review from 2005 to 2009 is among the longest on the durability of the valves and the patients' fate.
"This technology works and evidence is accumulating that it can be done safely and effectively," said Murat Tuczu, an interventional cardiologist and vice-chair of cardiovascular medicine at the Cleveland Clinic in Ohio. "For many patients, they didn't have any other options. We have to be careful in monitoring these people."
The reports provide a window into the technology that is gaining popularity among heart doctors, even as the first rigorous, controlled studies are only now providing information about long-term safety and effectiveness.
About 200,000 Americans suffer from narrowing and stiffening of the aortic valve, the three-flapped spigot between the heart's main pumping chamber and the artery that carries oxygen-rich blood to the body.
Potential $2.5 Billion Market
Edwards, based in Irvine, California, and Minneapolis-based Medtronic introduced the valves in Europe in 2007 based on early indications of safety and split the $700 million market. The U.S. market may be as much as $2.5 billion, said Jason Mills, an analyst with Canaccord Adams Inc. in San Francisco.
Edwards has U.S. regulatory approval for Sapien for patients who can't withstand open-heart surgery and is awaiting a decision on broader use. The two-year findings from its study of the device in high-risk surgery patients will be presented on March 26.
Medtronic's studies are expected to conclude next year and the company forecasts approval in 2014.
"We have experience now for seven years with the valve, and I haven't seen a single case of deterioration in this time," Linke said of his work with Medtronic's CoreValve "But the experience is limited to a few hundred patients that I have personally seen. We need information from a wide variety of patients to get more information on how this valve works and if it lasts as long as we are expecting."
Doctors' Experience
The differences in mortality rates may have stemmed from the doctors' experience with the valves that are threaded into the heart via a catheter through the femoral artery or a small slit in the chest. The study of the Edwards device was conducted at six sites in Canada after the valves were first introduced, while the Medtronic trial included only doctors who had performed at least 40 previous implants.
The Canadian study also released today at the heart association meeting shows the $30,000 valves appear durable and function well at least for the first three to four years after they are implanted, said Josep Rodes-Cabau, lead author and director of the cardiac catheterization and interventional laboratories at the Quebec Heart and Lung Institute.
The patients' chronic health conditions other than aortic stenosis ultimately limit their benefits, he said.
Long-Term Stability
"The study is reassuring because it shows the valves are stable over time," with no structural failures or problems with blood flow, he said. "But we should pay attention to the non- cardiac disease. When they survive the intervention, what is really behind the deaths of these patients is not cardiac disease."
After three years, 43 percent of patients treated with a Sapien or a newer version called Sapien XT died, rising to 48 percent after four years, the study found. For those who survived the first month, 67 percent subsequently died from lung disease, kidney failure, an erratic heart rate, frailty or other causes. About one-quarter died from heart disease and two patients needed re-treatment for valve infections.
The CoreValve study, funded by Medtronic, examined patients treated in a regular medical setting, rather than a controlled clinical trial. Fewer than 8 percent of the healthiest patients died after six months, compared with 17 percent of those with severe symptoms, underscoring how important it is to select the right patients, Linke said. Strokes, a feared side effect, occurred in 3.4 percent of patients within six months.
Patients with the CoreValve experienced a quick and dramatic improvement in symptoms, such as breathlessness, Linke said. While 79 percent had moderate to severe symptoms of heart failure before the surgery, just 13 percent were still struggling after six months.
30.Merck Blood Thinner Stops Heart Attacks With Risk of Bleeding
Bloomberg2012年3月24日
A study of an experimental blood thinner from Merck & Co. (MRK) showed that while the drug helped thwart heart attacks it raised the risk of brain bleeding, a side effect that could stymie its approval.
The three-year study of 26,449 patients who had heart attack, stroke or leg artery disease, found those who got Merck's vorapaxar along with standard therapy were 13 percent less likely to have another heart attack or die from cardiovascular causes than those on standard treatment. More patients on the drug also had serious bleeding, according to data reported today at the American College of Cardiology meeting in Chicago.
Vehicles enter the campus of Merck headquarters in Whitehouse Station, New Jersey.
Vehicles enter the campus of Merck headquarters in Whitehouse Station, New Jersey. Photographer: Emile Wamsteker/Bloomberg
The findings are unlikely to be good enough to get U.S. marketing approval, said Steven Nissen, a cardiologist at the Cleveland Clinic who wasn't involved in the study. New studies are needed to prove vorapaxar can be used in some patients without excess bleeding, he said.
"The results are disappointing," said Nissen. "The bottom line is it is extremely difficult to make the case that the benefits exceed the risks here."
In January 2011, Merck narrowed the scope of the trial to stop testing the drug in stroke patients and halted another vorapaxar trial entirely after doctors monitoring the results found an increased risk of brain hemorrhage in those patients. Merck, based in Whitehouse Station, New Jersey, later took a $1.7 billion charge to write down the value of the drug.
Efficacy Goal
Merck Vice President Francis Plat, in an interview at the meeting, called the company-funded vorapaxar study "positive" because it achieved its efficacy goal of preventing heart attacks and heart-related deaths. He said the company is discussing with top cardiologists what role the new medicine might play and which patient groups are likely to benefit.
Until those talks are done, "it is difficult for us to anticipate any strategy in terms of filing" for regulatory approval, he said.
David Morrow, a cardiologist at Brigham & Women's Hospital in Boston who led the study, said that the drug's benefit was compelling in the subset of 17,779 patients who had previous heart attacks. In that group, vorapaxar reduced the risk of heart attacks, strokes and cardiovascular death by 20 percent.
"There is potential for benefit in that group that clearly outweighs the risk of bleeding," Morrow said in a telephone interview.
Blood Thinner Challenge
The findings illustrate how difficult it is for drugmakers to come up with new blood thinners that work well on top of standard therapy without excessive bleeding, Nissen said in a phone interview. Heart patients typically take aspirin and also often take the blood thinner Plavix from Sanofi and Bristol- Myers Squibb Co. to reduce future risk.
"Anything where there is significantly more bleeding is a difficult sell for doctors," said Kim Vukhac, an analyst at Credit Agricole Securities in New York, in a telephone interview before the data was released. Investor "expectations are low" for vorapaxar, he said.
The Merck study added vorapaxar to standard therapy to see whether the drug safely provided greater protection from heart attacks, strokes, and cardiovascular deaths. The study met this primary goal.
The research showed that 148 fewer patients on vorapaxar got heart attacks, strokes or died of cardiovascular disease, as compared with those on placebo with the standard therapy, according to results being published in the New England Journal of Medicine in conjunction with the meeting.
The study also found 171 more patients on vorapaxar experienced moderate to severe bleeding. Also, the rate of brain bleeding doubled in the vorapaxar group. The brain bleeding risk was highest in patients who had a previous stroke, according to the results.
31.Monthly shots of Amgen drug slash cholesterol up to 66 percent
Reauters2012年3月25日
Monthly injections of an experimental drug from Amgen Inc slashed levels of cholesterol by up to an additional 66 percent in patients already taking statins, researchers said on Sunday, making it a potential strong rival to a similar drug being developed by Regeneron Pharmaceuticals Inc.
Amgen and Regeneron are racing to develop medicines that cut cholesterol through a new strategy, by blocking a protein called PCSK9.
In earlier studies, both drugs cut levels of "bad" LDL cholesterol by up to two thirds, although Amgen's AMG 145 had been tested in healthy volunteers taking no other cholesterol medicines, while Regeneron's REGN 727 was tested in patients with high cholesterol that also took statins.
Amgen on Sunday reported its first results from an early-stage trial of AMG 145 in patients with high cholesterol also taking statins, and impressive findings were seen in those getting injections every two weeks or every month.
In the 51-patient study, patients receiving monthly injections of AMG 145 and taking low to moderate doses of statins had up to a two-thirds reduction in LDL cholesterol by the eighth week of the study.
"We gave two doses four weeks apart and at the eighth week there was minimal tapering off" of the drug's potency, Clapton Dias, Amgen's medical services director, said in an interview. "The 66-percent reduction of LDL was maintained."
In patients receiving injections of AMG 145 every two weeks in combination with low to moderate doses of statins, LDL reductions of up to 75 percent were seen after six weeks, Amgen said.
Those taking the Amgen drug every two weeks in combination with high doses of statins had LDL reductions of up to 63 percent.
Data from the Phase 1 study were presented at the annual scientific sessions of the American College of Cardiology being held in Chicago.
Researchers on Monday are slated to release the full data from a Phase II study of REGN 727, which Regeneron is developing in partnership with French drugmaker Sanofi. The findings will better enable investors to size up the pros and cons of the rival therapies.
Neither drug has so far shown any serious side effects in clinical trials.
GETTING EVERYONE TO GOAL?
Dias said the ability of drugs like AMG 145 to slash LDL beyond decreases attributed to statins such as Pfizer Inc's Lipitor could help enable millions of heart patients to finally get their cholesterol levels tightly controlled.
"A good 60 percent of high-risk patients in the United States are unable to meet their aggressive goals of getting LDL levels down" to target levels, Dias said, making them prime candidates for AMG 145 if it continues to do well in trials and is approved.
Steven Nissen, head of cardiology at the Cleveland Clinic, said anti-PCSK9 drugs, when used with statins, could eventually have a profound impact.
"If these drugs come to market, just about everyone with high cholesterol will be able to get to goal," Nissen said, with the possible exception of "several hundred" people with rare genetic conditions that would not benefit.
Industry analysts says PCSK9 inhibitors, if approved, could generate annual sales approaching $20 billion.
Nissen cautioned, however, that larger trials are needed to assess the safety of AMG 145 and REGN 727. He said a big question that remains is whether U.S. regulators would approve the drugs without first requiring major studies that evaluate long-term heart attack and stroke risk.
"That's the subtle wrinkle here," said Nissen, who speculated the U.S. Food and Drug Administration might be willing to approve them without such costly outcomes trials because statins were approved without them on the basis of their ability to lower cholesterol.
Nissen said statins and the PCSK9 inhibitors, although different classes of medicines, both exert their influence on the LDL receptor - a protein that carries LDL cholesterol through the bloodstream.
"So one could argue that PCSK9 uses the same pathway as statins," he said, a consideration that might score points with the FDA.
A four-week dosing schedule might be "modestly more attractive" to patients and doctors than injections every two weeks, Nissen said.
"But the frequency is not a make or break consideration," he added, because patients would be able to inject themselves with the same types of tiny needles that are already widely used and accepted for other conditions, including diabetes.
32.Scientists find gene that can make flu a killer
Reuters News2012年3月25日
A genetic discovery could help explain why flu makes some people seriously ill or kills them, while others seem able to bat it away with little more than a few aches, coughs and sneezes.
In a study published in the journal Nature on Sunday, British and American researchers said they had found for the first time a human gene that influences how people respond to flu infections, making some people more susceptible than others.
The finding helps explain why during the 2009/2010 pandemic of H1N1 or "swine flu", the vast majority of people infected had only mild symptoms, while others - many of them healthy young adults - got seriously ill and died.
In future, the genetic discovery could help doctors screen patients to identify those more likely to be brought down by flu, allowing them to be selected for priority vaccination or preventative treatment during outbreaks, the researchers said.
It could also help develop new vaccines or medicines against potentially more dangerous viruses such as bird flu.
Paul Kellam of Britain's Sanger Institute, who co-led the study and presented the findings in a telephone briefing, said the gene, called ITFITM3, appeared to be a "crucial first line of defense" against flu.
When IFITM3 was present in large quantities, the spread of the virus in lungs was hindered, he explained. But when IFITM3 levels were lower, the virus could replicate and spread more easily, causing more severe symptoms.
People who carried a particular variant of IFTIM3 were far more likely to be taken into hospital when they got flu than people who carried other variants, he added.
"Our research is important for people who have this variant as we predict their immune defenses could be weakened to some virus infections," Kellam said.
"Ultimately as we learn more about the genetics of susceptibility to viruses, then people can take informed precautions, such as vaccination to prevent infection."
MICE EXPERIMENTS HELPED MAKE BREAKTHROUGH
The potential antiviral role of IFITM3 in humans was first suggested in studies conducted by Abraham Brass of the Ragon Institute and Gastrointestinal Unit of Massachusetts General Hospital in the United States. Using genetic screening, he found that it blocked the growth of flu and other viruses in cells.
Teams led by Brass and Kellam then took the work further by knocking out the IFITM3 gene in mice. They found that once these animals contracted flu they had far more severe symptoms than mice with the IFITM3 gene.
In effect, they said, the loss of this single gene in mice can turn a mild case of influenza into a fatal infection.
The researchers then sequenced the IFITM3 genes of 53 patients who had been hospitalized with seasonal or pandemic flu and found that a higher number of them had a particular variant of IFITM3 compared to the general patient population.
The researchers believe this variant results in a shorter version of the protein or one that is less abundant in cells, leaving patients more vulnerable to flu when they get it.
"Our efforts suggest that individuals and populations with less IFITM3 activity may be at increased risk during a pandemic, and that IFITM3 could be vital for defending human populations against other viruses such as avian influenza," said Brass.
33.Extra smoking counselling 'doesn't help quitters'
BBC News2012年3月23日
Offering free nicotine patches or intensive counselling to smokers calling the English NHS helpline does not help them quit, a study in the BMJ says.
University of Nottingham researchers found that this additional support - on top of what is already offered - had no effect on numbers giving up smoking.
More than 2,500 smokers were followed up over one year.
The Department of Health said it would not now offer any extra services.
The Department of Health and the UK Centre for Tobacco Control Studies, in Nottingham, funded the study to find out if the support offered currently by the NHS Smoking Helpline could be improved.
'Proactive support'
The smokers in the study were split into four groups.
The first received standard support in the form of NHS Stop Smoking Services advice, letters, emails, text messages and access to a helpline.
The second group received the same support but were also offered free nicotine replacement therapy (NRT) in the form of a 21-day supply of patches.
The third group received "proactive support" in the form of standard support plus extra counselling sessions and messages from helpline staff.
The fourth group received the same proactive support as the third group but with added free nicotine patches.
Participants in the study were followed up one month and six months later.
Analysis of the data showed that six months after quitting, 18.9% of the 59% who were contacted said they had managed not to smoke.
Nearly 80% of this group agree to give a breath test for carbon monoxide to prove that they had stopped smoking.
The study found no significant difference in success rates between those people offered different types of supportive counselling, or between those given nicotine replacement therapy.
Some 18.2% of those given proactive support had quit, compared with 19.6% of those who did not receive this support.
Overall, 17.7% of smokers who were offered the patches stopped smoking, compared with 20.1% of those not offered them.
Even one month after setting a quit date, no significant differences were found between the groups.
'Costly burden'
Professor Tim Coleman of the UK Centre for Tobacco Control Studies, who led the study, said the trial had shed light on how telephone helplines could be used to help smokers who wanted to stop.
"On the basis of this study, giving out free nicotine patches and more intensive telephone counselling through the English national quitline just doesn't seem to work.
"It brings into sharp relief the need to find other ways of using quitlines to help smokers give up, and so to reduce the terrible effects smoking has on people's lives and the costly burden to the NHS."
Amanda Sandford, from Action on Smoking and Health (Ash), said the study showed that standard NHS care was difficult to improve upon.
"We are fortunate in having a wide range of treatments available in this country which can be tailored to the individual needs of the smoker.
"The important thing is that people wanting to stop smoking should get professional advice.
"The 17-20% quit success rate found in this study is far higher than when trying to stop smoking on your own."
A Department of Health spokesman said the research was helpful in deciding what the helpline should offer.
"The Coleman study looked at what would happen if the helpline also offered extra services to smokers such as free nicotine patches. It found that there would be little additional benefit so we won't be adding this to the helpline."
34.Stem-Cell Trial Failed to Treat Heart Failure
But small improvement detected in one measure of heart function, study found
HealthDay News2012年3月24日
An innovative approach using patients' own bone marrow cells to treat chronic heart failure came up short in terms of effectiveness, researchers report.
Use of stem cell therapy to repair the slow, steady damage done to heart muscle and improve heart function is safe, but has not been shown to improve most measures of heart function, the study authors said.
"For the measures we paid most attention to, we saw no effect, there is no question about that," said researcher Dr. Lemuel Moye, a professor of biostatistics at the University of Texas School of Public Health in Houston.
"Ultimately, this is going to pay off handsomely for individuals and for public health in general, but it's going to take years of work," Moye said. "We are the vanguard looking for new promising lines of research."
While the hoped-for results didn't materialize, there appeared to be a small improvement in some patients, he said. "When we looked at another commonly used measure of heart function called ejection fraction, or the strength of the heart's pumping, that's where all the action was," Moye noted.
It's hard to know which measures of heart function to look at, Moye explained. "We have had some difficulty with that," he said.
Future research will look at other measures of heart function, pay more attention to the characteristics of the cells that are injected and determine which cells are best, he added.
Cardiac cells and other types of specially prepared cells are available now that were not accessible when this study started in 2009, Moye pointed out.
The results of the trial, which was sponsored by the U.S. National Heart, Lung, and Blood Institute, were to be presented Saturday at the American College of Cardiology's annual meeting in Chicago. The report was also published online March 24 in the Journal of the American Medical Association.
For the study, Moye and colleagues worked with 92 patients, average age 63 and mostly male, who had heart failure with and without chest pain. They were randomly assigned to receive either an injection of 100 million bone marrow cells from their own bone marrow, or an inactive placebo. Patients in both groups also received aggressive medical therapy.
During the trial, the researchers looked for improvements in blood volume in the heart, oxygen use by the heart and blood flow through the heart.
After six months, the researchers said they saw no difference between the groups in these measures. Nor was any difference seen in the extent of heart damage, heart movement during contractions or overall condition.
Moye's team did find a slight improvement in the heart's ability to pump blood among patients 62 and younger. The improvement was small, only 3.1 percent, but patients in the placebo group declined 1.6 percent in this measure, they said.
It's possible that cells of younger people are more potent, and that's borne out by improvement in heart function seen in younger patients who did not get bone marrow cells, Moye said.
"We have demonstrated that the characteristics of the cells are correlated with heart function, so that the better the cells, the better the response -- so even in patients who did not get stem cells, those younger patients did better," he said.
Commenting on the study, Dr. Gregg Fonarow, director of the Ahmanson-University of California, Los Angeles, Cardiomyopathy Center, said there has been "tremendous interest in cell-based therapies" to treat acute and chronic heart disease and chronic heart failure.
Most studies trying delivery of different types of cells have been small and not adequately powered to demonstrate improvement in cardiac function or clinical outcomes, and results have been mixed, Fonarow said.
"While this study failed to meet any of its primary or secondary endpoints, the insights provided will be helpful in designing future trials," Fonarow added. "However, whether cell-based therapies will be of therapeutic value to patients with heart disease and heart failure remains to be seen."
More information
For more information on heart disease, visit the American Heart Association.
SOURCES: Lemuel A. Moye, M.D., Ph.D., professor, biostatistics, University of Texas School of Public Health, Houston; Gregg C. Fonarow, M.D., director, Ahmanson-University of California, Los Angeles, Cardiomyopathy Center, co-director, UCLA Preventative Cardiology Program; March 24, 2012, Journal of the American Medical Association, online; presentation, American College of Cardiology, annual meeting, March 24, 2012, Chicago
35.Showing Patients Images of Their Clogged Arteries a Powerful Wake-Up Call
They were more likely to take statins, lose weight afterwards, studies find
HealthDay News2012年3月24日
Showing patients with clogged arteries evidence of their condition makes them more likely to stick with treatments such as weight loss and cholesterol-lowering statins, two related studies found.
Coronary artery disease is the most common type of heart disease in Americans, but many patients fail to adhere to therapies that can treat or prevent heart disease. For example, patient compliance with statin therapy has been reported to be as low as 20 percent to 50 percent, the researchers said.
The two studies included patients who underwent coronary artery calcium scoring with cardiac CT, a test that takes clear, detailed pictures of the heart.
Patients with the most severe coronary artery disease who saw images of their heart were 2.5 times more likely to take statins as directed, and more than three times more likely to lose weight as those whose scans showed little or no evidence of disease.
The studies were scheduled for presentation Saturday at the American College of Cardiology (ACC) annual meeting in Chicago.
"Beyond the diagnostic and predictive value of cardiac computed tomography, it is also quite beneficial in terms of motivating people to pursue behaviors that we know result in a reduction in cardiovascular" disease and death, Dr. Nove Kalia, one of the lead investigators for both studies, said in an ACC news release.
"Seeing a coronary artery calcium scan gives patients a visual picture of how severe their disease is, and this picture seems to have a really big impact," Kalia added. "With increasing use of noninvasive imaging, it seems we already have a powerful tool in helping to motivate patients to be compliant. While we haven't clarified whether this increased compliance results in reductions in [heart] event rates, we have extrapolated that this would likely be the case. I think we may find this can also help improve outcomes."
More information
The American Academy of Family Physicians has more about coronary artery disease.
SOURCE: American College of Cardiology, news release, March 24, 2012
36.Low-Dose Daily Aspirin Enough to Help Heart Attack Patients: Study
Using higher dosage didn't improve outcomes, but might increase bleeding risks, experts say
HealthDay News2012年3月24日
Heart attack patients who take either a high or low dose of aspirin daily have the same level of protection against another heart attack or other cardiovascular events such as stroke, according to a new study.
Along with anti-clotting drugs, a daily aspirin is recommended for nearly all of the more than one million Americans who suffer a heart attack each year, but the most effective dose hasn't been determined.
Higher doses of aspirin typically come with higher bleeding risks, so determining whether a high dose is needed or not has patient safety implications.
To clarify the issue, researchers analyzed data from more than 11,000 heart attack patients around the world who were prescribed either a low daily dose (150 milligrams or less) or a high daily dose (more than 150 milligrams) of aspirin along with anti-clotting medications.
The findings were to be presented Saturday at the annual meeting of the American College of Cardiology in Chicago.
"We observed no difference between patients taking a high dose versus a low dose of aspirin as it relates to cardiovascular death, heart attack, stroke or stent thrombosis [clot]," lead author Dr. Payal Kohli, a cardiology fellow at Brigham and Women's Hospital, said in a hospital news release.
"Interestingly, we did find a dramatic difference in practice patterns of physicians in North America compared to those in the rest of the world," Kohli added. "North American physicians prescribed a high dose of aspirin for two-thirds of all their patients, while the exact reverse was true of the rest of the world. International physicians prescribed a low dose of aspirin to more than two-thirds of their patients."
Patients who received high doses of aspirin were more likely to have cardiac risk factors and higher cholesterol levels, while those who received low doses were more likely to be white and have no prior history of high blood pressure.
One expert said the study confirms there is "no role for high-dose aspirin" in this type of scenario. Dr. Jenifer Yu, a cardiologist and research fellow at Mount Sinai Medical Center in New York City, said she and her colleagues published similar findings at the American Heart Association annual meeting in 2011.
In that study, "after adjusting for baseline differences in the two groups, we found that the use of high-dose aspirin (greater than 200 milligrams) afforded no additional protection with respect to ischemic events [such as heart attack or stroke] in comparison to low-dose aspirin (less than 200 milligrams)," Yu noted. "However, patients on high-dose aspirin experienced more major bleeding," she added.
The newer study from Brigham & Women's also found that the anti-clotting drug prasugrel (brand name Effient) was more effective at preventing major cardiovascular events than the anti-clotting drug clopidogrel (brand name Plavix), regardless of whether patients took low- or high-dose aspirin.
Findings presented at medical meetings are typically considered preliminary until published in a peer-reviewed journal.
More information
The American Heart Association has more about aspirin and heart disease.
-- Robert Preidt
SOURCES: Jenifer Yu, M.B.B.S., F.R.A.C.P., cardiologist and research fellow at Mount Sinai Medical Center, New York City; Brigham & Women's Hospital, news release, March 24, 2012
37.Study Might Explain Brain Overgrowth Seen in Autism
Abnormalities found in DNA, RNA that regulate brain cell growth
HealthDay News2012年3月24日
Researchers report that they have identified abnormalities in the DNA and RNA of cells in the prefrontal cortex of the brains of autistic children.
The findings may help to explain the underlying mechanism for the brain "overgrowth" that prior reports have documented in autistic children. Those studies have found that the brains of young children with autism are larger than the brains of non-autistic children, particularly in the prefrontal cortex. The prefrontal cortex is key to complex thoughts and behaviors, including language, social behavior and decision-making.
This growth abnormality likely contributes significantly to the social, communication, and emotional deficits common among people with autism, the researchers said.
In the new study, researchers analyzed tissue from the prefrontal cortexes of 33 postmortem brain samples from autistic and non-autistic people aged 2 to 56.
In addition to DNA differences known as copy number variations, researchers also did genome-wide RNA profiling and found differences in RNA between the autistic and non-autistic brains. RNA (ribonucleic acid) plays crucial roles within cells, serving as an intermediary between DNA, the blueprints for genetic information, and the production of proteins that carry out a vast array of vital activities in cells.
The RNA abnormalities appear to be involved with genes that code for proteins regulating cellular growth, the researchers said.
"What we found was the networks that are supposed to regulate the genesis of brain cells and develop them were abnormal. The networks that were supposed to regulate DNA repair were turned down. And the networks supposed to regulate neuron removal and survival were abnormal," said study author Eric Courchesne, director of the Autism Center of Excellence at the University of California, San Diego (UCSD) School of Medicine.
The study is published in the March 22 issue of PLoS Genetics.
How might these differences fit into the autistic picture?
Preliminary research by the UCSD team found that an excessive amount of neurons, or brain cells, might account for the overgrowth. While typically developing kids had about 0.88 billion neurons in the prefrontal cortex, autistic children had about 1.57 billion.
According to the researchers, the copy number variations along with the RNA abnormalities may disrupt the cell cycle and may explain the underlying mechanism driving the overgrowth.
"We found DNA defects, or copy number variations, in a variety of genes that regulate cell production and cell survival," Courchesne said. "To us, that suggests the explanation for why there are an abnormal number of neurons in the prefrontal cortex. Those genes fall into networks that control the number of neurons generated and the number that survive in prenatal life."
Researchers also noted that the RNA differences vary, depending on the age of the brain, with children and adults having different RNA profiles.
Courchesne said that the way the brain responds to that overgrowth of neurons -- in other words, what's happening in those repair pathways -- may help to explain why people with autism may have different trajectories, with some seeming to regress and others continuing to learn new skills throughout their lifetime.
"In adulthood, we see individuals that continue to improve, and continue to gain more and more skills and abilities," Courchesne said. "Then there are others that don't show that continued, ongoing improvement or show the opposite. My best guess is the trajectory has less to do with the original cause of the autism, than with an individual's specific composition of genes, or the available genes to remodel the brain."
Robert Ring, vice president for translational research at Autism Speaks, said researchers offer up a provocative and plausible theory. However, he noted that while brain overgrowth is well-established, only one, small study has shown that the explanation for it is too many neurons.
"What's valuable about the approach this group has taken is that they've gone directly to the tissue of interest, and have asked, 'Is there any evidence there are abnormalities in the expression of genes that correlate with the neuro-anatomic or cellular findings that have been reported?'" Ring said.
"What they're reporting is there is indeed some evidence that particular pathways might be disregulated in the autistic brain vs. the control brain, and some of these pathways, when you look at their function, may be a plausible explanation for the increased growth and increased cell number."
The study, Ring added, offers up new clues for researchers to pursue, but nothing is proven. "There is an enormous amount of work needed to confirm this," he said.
More information
The Exploring Origins Project has more on RNA.
SOURCES: Eric Courchesne, Ph.D., director, Autism Center of Excellence, University of California, San Diego School of Medicine; Robert Ring, Ph.D., vice president, translational research, Autism Speaks; March 22, 2012, PLoS Genetics
38.Hormonal Changes May Trigger Migraines in Some Women
Evidence supports link between fluctuations in female hormones and painful headaches
HealthDay News2012年3月24日
Hormonal changes are a major reason women are far more likely than men to have migraine headaches, research suggests.
About 30 million Americans suffer from migraines, and women are nearly three times more likely to have them than men, National Headache Foundation data indicates.
"Hormonal changes are a big contributor to the higher female incidence," Dr. Michael Moskowitz, a professor of neurology at Harvard Medical School in Boston, said in a news release from the Society for Women's Health Research. "There are lines of evidence that support this from lab to clinical evidence and a decreased [although not abolished] incidence in postmenopausal females."
Women who experience migraines may find they often occur just before or just after the onset of menstruation. Also, women's patterns of migraines may change during pregnancy and/or menopause.
Many other factors can increase the risk of having migraine headaches for both men and women:
Heredity: People with a family history of the painful attacks, and especially those with one or more first-degree relatives with migraines, are at significantly increased risk.
Age: People typically experience migraines between the ages of 15 and 55, and the first attack usually occurs before age 40.
Medical conditions: Certain health problems, such as high blood pressure, anxiety, depression, stroke and epilepsy, have been associated with migraines.
Although there is no cure, migraines can be managed effectively with the help of a doctor. Many drugs are available for prevention and pain relief, and lifestyle changes can eliminate some triggers that cause migraines, Moskowitz said in the news release.
More information
The U.S. National Institute of Neurological Disorders and Stroke has more about migraines.
SOURCE: Society for Women's Health Research, news release, March 20, 2012
39.Treating Gum Disease May Help Diabetics Avoid Complications
Good periodontal care helped reduce hospitalizations, medical costs over time, study found
HealthDay News2012年3月23日
Treating gum disease in people with diabetes reduces their medical costs and hospitalizations, new research shows.
The three-year study included diabetes patients with gum (periodontal) disease who were randomly selected either to receive periodontal therapy or no treatment (control group).
Those in the treatment group underwent periodontal therapy in the first year and their gum health was maintained for the following two years. The patients in the control group had incomplete periodontal therapy before the study and did not receive regular periodontal maintenance during the study.
The total annual per-patient cost of hospital admissions, doctor visits and overall medical care was an average of more than $1,800 lower in the treatment group than in the control group. The patients in the treatment group had 33 percent fewer hospital admissions.
The study was to be presented Friday at the annual meeting of the American Association for Dental Research, in Tampa, Fla.
"There have been emerging links between oral infections and systemic diseases such as diabetes, which is increasingly prevalent in our population," lead researcher Marjorie Jeffcoat, professor and dean emeritus of the University of Pennsylvania School of Dental Medicine in Philadelphia, said in an association news release.
"My research team and I had looked at other data sets and we knew that health care costs could be reduced, but we wanted to look at the hospitalizations and see how those could be reduced," Jeffcoat said. "This study provided direct insight as to how lower hospitalizations could be achieved through periodontal therapy, and we will further this study by analyzing other chronic diseases and conditions such as heart attacks, strokes and pregnancy with pre-term birth."
Because this study was presented at a medical meeting, the data and conclusions should be viewed as preliminary until published in a peer-reviewed journal.
It's also important to note that although the study showed an association between better gum care and lowered health costs for diabetics, it didn't prove that healthier gums directly resulted in fewer hospitalizations or lowered costs.
More information
The American Dental Association has more about gum disease.
SOURCE: American Association for Dental Research, news release, March 23, 2012
40.Other Topics
1) 1千万光年離れたクモの巣のような銀河 NASAが画像公開
産経新聞社2012年3月24日
まるでクモの巣が広がっているように見える渦巻き銀河の画像を赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーがとらえることに成功し、米航空宇宙局(NASA)が23日までに公開した。
この渦巻き銀河は約1千万光年離れたきりん座の方向にある「IC342」。銀河系の星間物質に妨げられ可視光での観測は難しいが、赤外線で観測すると、網目が広がる円盤構造をくっきりと確認することができた。赤っぽく光っているのはちりだという。
中心部の特に明るい場所では、爆発的な勢いで恒星が生まれており、周辺のちりやガスが材料を供給しているとみられる。
◆Spider Web of Stars(NASA)
2) 房総沖に大活断層、M9の地震起こす可能性
日本経済新聞社2012年3月26日
房総半島南端から南東に百数十キロ以上離れた太平洋の海底に、これまで存在が知られていなかった長大な2つの活断層が存在するとの調査結果を、広島大や名古屋大、海洋研究開発機構などの研究グループが26日までにまとめた。
長さは160キロと300キロ以上で、一度にそれぞれの断層全体が動けば、いずれもマグニチュード(M)8~9の地震を起こす可能性があるという。グループの渡辺満久・東洋大教授(変動地形学)は「ノーマークで未調査の活断層。強い揺れや津波が関東南部や東海地方に及ぶ可能性があり、早急に詳しく調査すべきだ」としている。
グループは海上保安庁作製の海底地形図などを使い、地形を詳細に分析。地震で形成される崖や地形の盛り上がりから活断層の位置を推定した。
渡辺教授によると、2つの活断層が確認されたのは、2つの海のプレート(岩板)と陸のプレートの境界が接する「三重会合点」付近と、そのやや陸側の海底。
ほぼ南北に走る2断層は並行しており、東側の活断層は長さ300キロ以上、西側は少なくとも160キロ。地震でできた崖の高さは東側の活断層が約2千メートル、西側は3千メートル超で「いずれも大地震を何度も繰り返してきた可能性が高い」(渡辺教授)という。
断層の北側には、1677年の延宝房総沖地震(推定M8.0)や1953年の房総沖地震(M7.4)の震源域があるが、これらは別の活断層が動いたとみられ、2つの活断層の歴史的な活動は分かっていない。
活断層は、海溝沿いなどで起きる「プレート境界型地震」との関連は低いとみられてきた。グループは昨年、東日本大震災で動いたとみられる約500キロの海底活断層を日本海溝沿いで確認している。調査結果は東京都内で開かれる日本地理学会で29日発表する。
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